長 慎也, 甲斐 宗徳, 川合 晶, 日野 孝昭, 前島 真一, 筧 捷彦
情報処理学会論文誌. プログラミング 45(9) 25-46 2004年7月15日
初学者がプログラミングを学習する場合,一般に,最初は簡単な概念を学び,次第に高度な概念を習得するという順序を踏む.学習環境も,その進行に沿ったものが用意できるとよい.最初は,難しい概念を知らなくても使える取っ付きやすい言語や環境を与え,学習が進むに従って,高度な概念も扱えるJavaなどの実用的な言語へ移行させるとよい.これによって,初学者にプログラミングに対する興味を持たせ,学習意欲を継続させることが可能であると考えられる.そこで,プログラミング学習の導入部において用いるのに適した言語Nigariとその環境を開発した. Nigariの言語仕様は,Javaのそれを簡素化したものになっており,クラスやメソッドの宣言など,初学者にとって理解が難しいものを書く必要がない.一方,基本的な制御構造などは. Javaとぽとんど同じ仕様である.Nigariの実行環境は,オブジェクトを自動的に可視化する機能を持つ.これによって,学習者のプログラミングヘの意欲を向上させるだけでなく,オブジェクトの概念をも理解させることができる.早稲田大学コンピュータ・ネットワークエ学科1年前期のプログラミングの授業を実験の場とした.この授業は本来Javaを用いて実習を行うが,導入部にNigariを用いた.実験では,オブジェクトの可視化機能について学生から高い評価を得られた.また,言語を簡素にすることについても,ある程度の評価を得られた.