Curriculum Vitaes

Satoko・Chonja Yang・Nagayama

  (梁・永山 聡子)

Profile Information

Affiliation
Tama Art University
Degree
修士(社会学)(一橋大学)

Contact information
scny.roomrikkyo.ac.jp
Other name(s) (e.g. nickname)
Yang Chong Ja
Researcher number
11011437
J-GLOBAL ID
201501043720374532
researchmap Member ID
B000247143

External link

アカデミアとアクティビズムを架橋する在日朝鮮人3世の社会学者です。ふぇみ・ゼミ&カフェで企画・運営、1923関東朝鮮人虐殺を記憶する行動、在日本朝鮮人権協会会員(性差別撤廃部会)などで活動。市民にアカデミアや社会運動の知見を広めるトークイベント「聡子の部屋」を月二回開催。

研究課題:「ポストコロニアル社会における植民地主義残滓のフェミニズムの権力関係」

<現在取り組んでいるもの>

(1)日本軍の性暴力被害・加害問題とその影響

(2)日本帝国主義時代台湾・朝鮮・日本のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)(特に:「帝国主義下の近代産婦人科医療と伝統的産婆(助産)の攻防」)

(3)現代社会における東アジア(朝鮮半島を中心に)のフェミニズムムーブメント

(4)主流派フェミニズムの問題とインターセクショナルフェミニズムの可能性と課題

(5)韓国・日本の左派・進歩派・リベラルにおけるセクシュアルハラスメント・パワーハラスメント

(6)朝鮮半島・日本のエンターテイメントにおけるフェミニズム・ジェンダー(作品・業界)

方法論

(a)質的調査研究(フィールドワーク、インタビュー調査、アクションリサーチ)

(b)公文書調査の方法と課題

(c)表象構造研究

などの調査・研究・運動を行う。

 主な活動歴(終了したものもあります)

<日本軍性暴力(日本軍「慰安婦」問題、日本軍性奴隷制度問題)>

吉見義明名誉毀損裁判・事務局(終了)、希望のたね基金で日韓若者交流事業に従事(2017年から2021年現在は卒業)、韓国・女性家族部・日本軍慰安所研究所委託研究(2021年度)。在日本朝鮮人人権協会性差別撤廃部会、アジア女性資料センター他で活動。

<朝鮮人強制連行> 朝鮮人強制連行真相調査団(東京)事務局(2015年から2022年)現在は個人研究。

<関東大震災朝鮮人虐殺> 1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動 事務局(2018年から現在)。

 


Papers

 7

Misc.

 29

Books and Other Publications

 19
  • 宋連玉, ふぇみ, ゼミ&カフェ運営委員会 (Role: Editor, はじめにー在日朝鮮人フェミニズムを編み上げる試み(梁・永山聡子))
    有限会社一聡舎, Oct 18, 2025 (ISBN: 4902784041)
    近にいる(だろう)在日朝鮮女性の姿は今日では十人十色どころか百人百色で決して一様ではない。 既婚者の場合、配偶者が日本人というケースが多数を占める現状にある。かつて在日朝鮮人は60万人といわれたが、ポジティブに捉えたら在日朝鮮人にかかわりを持つ人々が増えていることになる。しかし関係性をポジティブにするためには、直接、間接の経験、その記憶の破片をジグソーパズルのようにつなぎ合わせる作業が必要である。破片が磨滅したり、消えてしまう前に、当事者のみならず、関係者の記憶の歴史的意味を知る必要があろう。この歴史的意味を知るために、植民地主義という認識枠を用いたい。「民族」に関わることを強烈に記憶するのも、記憶を疎むのも植民地主義のなせるわざである。 在日朝鮮女性が個別に経験した家父長制や性差別と植民地主義との関係性、それらがどこまで普遍性をもち、分ちあえるものなのか?
  • ふぇみ・ゼミ&カフェ運営委員会 (Role: Joint editor, 企画編集責任者、はじめに、序 章 対談 戦後75年、戦争の記憶をどう継承するか? 吉田 裕/梁・永山 聡子、終 章 日本軍兵士の戦争トラウマ 中村 江里(聞き手 梁・永山 聡子))
    あけび書房, Jul 7, 2025 (ISBN: 4871542823)
    本書は、インターセクショナリティの視点から、侵略戦争や植民地支配の歴史を捉え直すとともに、現代にまで連続する差別や不平等の構造を理解することを目的としています。 戦争がもたらしてきた甚大な被害に対する十分な反省も謝罪も補償もないまま、日本政府は軍拡を進めています。そうした中、日本の戦争責任・植民地支配責任の歴史のみならず、日本の戦争責任・植民地支配責任の現在を考えるための一冊として、本書が多くの人に読まれることを心から願っています。 <目次> 序章 対談:戦後75年、戦争の記憶をどう継承するか? 吉田 裕/梁・永山 聡子 第1章 国家謝罪なきフィールドを調査する ―中国における日本軍性暴力被害者の名誉回復運動 熱田 敬子 第2章 日韓の歴史をたどる 土地の収奪 洪 昌極 第3章 裴奉奇さんを記憶する ―朝鮮半島の分断を超えて 朴金 優綺 第4章 人探しの2・28 ―ジェンダーと国家暴力、責任の問題 沈 秀華(翻訳:熱田 敬子) 第5章 日本占領地香港とその周辺 和仁 廉夫 第6章 近代日本の戦争障がい者 松田 英里 終章 日本軍兵士の戦争トラウマ 中村 江里(聞き手:梁・永山 聡子)
  • 秋元美穂, 佐藤香陽子 (Role: Contributor, 解説「脱植民地化とインターセクショナル・フェミニズム ― 韓国フェミニズム運動の過去・現在・未来」) (Original Author(s): Array)
    梨の木舎, May 23, 2025 (ISBN: 481662502X)
  • 一般社団法人ふぇみ, ゼミ&カフェ (Role: Editor, おわりに)
    一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ, Dec, 2024
    概要 ふぇみ・ゼミ&カフェの開催した講座やシンポジウム、活動などの記録を紹介するブックレットシリーズ。シリーズ創刊の本書では国際シンポジウム「ギグワーカーとジェンダー、セクシュアリティ〜バリアの回避と権利保障」(2024年3月10日開催)の貴重な記録を紹介する。 フードデリバリーの配達員、クラウドソーシングでのデータ入力やライターなど、デジタルプラットフォームを通じて単発の仕事を請け負うギグワークが広まっている。労働法の不適用や、失業、労災の保障、単価の低さ、強大な権限を持つデジタルプラットフォーム運営企業による不利益変更や不透明な審査プロセスによるアカウントの停止など、様々な問題が指摘されているギグワークは、現在、決して「多様な働き方」と持ちあげるようなものにはなっていない。 しかし、同時に既存の労働市場においては、ジェンダー、セクシュアリティ、人種・民族、障害、在留資格の種類、フルタイムワークが標準とされていることなど様々なバリアがある。「標準的」な労働者ではないとして排除されていた人たちにとって、デジタルプラットフォーム上でのやり取りが多くを占める、ギグワークの参入障壁の低さは魅力である。 こうした視点から、ギグワーカーの現状と労働運動の課題について韓国、香港の事例を伺い、プラットフォーム協同組合など、今後の展開の可能性を探る。 ▪️▪️▪️目次▪️▪️▪️ 権利ある自由な労働にむけて 熱田敬子 香港のプラットフォーム労働者~回顧と展望 林百花(翻訳・熱田敬子) 韓国におけるフラットフォーム労働の現状と権利保障の取り組み 金美珍 プラットフォーム協同組合とジェンダー 中野理 マッチング型ベビーシッターにみるギグワーク拡大の背景と論点 畔蒜和希 プラットフォーム資本主義を問う:国際シンポジウムを終えて 飯野由里子 なぜいまさらギグワーカーの話? 趙一青 おわりに 梁・永山聡子 ふぇみ・ゼミ&カフェとは 小西響子 ご寄付のお願い 小西響子
  • キム・ジヘ(尹怡景) (Role: Contributor, 解説『空気のような存在としての家族、問題の因子としての家族』) (Original Author(s): Array)
    大月書店, Jul 24, 2024 (ISBN: 4272350633)

Presentations

 61
  • 梁, 永山聡子
    朝鮮フェミニズムを編み込む講座 韓国編Vo.1, Apr 17, 2025, 一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ
    現在の韓国社会は「フェミニズム運動」抜きで語ることはできません。何よりも韓国社会全体に大きな影響を与えました。さらに、ここ数年世界中から#Metoo運動があらゆる階層で展開された地域として位置づけられています。#withyouという独自の概念を生み出し、その後の社会全体の構造・文化・認識を変革させました。現在起きている韓国政治を紐解く際にも「より民主化・フェミニズム化を模索する勢力とそれを阻止したい勢力」との攻防の一環として捉えることができます。 本講座ではVol.1(4月から6月:植民地時代から民主化運動)、Vol.2(10月から12月:1990年代から現在)の2回で、「なぜ、韓国社会で#Metooがこれほどまでに展開され、社会全体のフェミニズム化へと変革の舵が切られたのか」について歴史的な経緯、そこで行われた韓国社会の動き、得られた成果や課題などをみていきます。 その際に重要なことは、直近の社会的・政治的状況、フェミニズムリブート(再生)や#Metoo運動を一過性のものとして捉えるのでなく、朝鮮半島で歴史的に展開されたジェンダー平等を求める運動・研究、フェミニズム化を目指した人々の軌跡があることを重視した視点でみていきます。その視点に留意しながら、民の「声」「行動」、社会運動、制度・法改正、慣習・文化革命、経済産業の認識などなどの展開をみていこうと思います。 講座内では韓国でしか出版されてない文献も使いますが、なるべく関連する日本語で読める文献、インターネットサイト、韓国映画、韓国ドラマなども紹介する予定です。(主な参考文献は日本語で読めるものにしています) 現代の韓国社会を知りたい人も、歴史的な経緯を知りたい人も、Kpopや韓国文化が大好きだけど、社会については初学者だという人も、参加できる講座にしたいと思います。 「韓国フェミニズムの源泉と魅力ーあらゆる支配から主体を立ち上げる、共に闘う」日程 / 各回テーマ ※全ての講座に、UDトーク(校正者あり)による日本語リアルタイム字幕が付きます。 ※時間は第1回から第4回19:00-21:00。第5回18:00-20:00(懇親会を赤羽事務所で開催します)。 <各回の案内>「韓国フェミニズムの源泉と魅力ー主体を立ち上げる、共に闘う」 Vo.1では、まず、日本帝国主義に朝鮮に適用された民族差別・ジェンダー差別・階級差別のポイントを確認し、それらに立ち向かい独立運動とフェミニズム運動に心身を投じた朝鮮フェミニストを紹介し、その思想や考えを知ります。その後、解放・建国・分断という社会変動下のフェミニズムを確認し、労働運動における女性労働者の運動をみていきます。 韓国社会を考える上で、外すことのできない「民主化運動」ですが、ジェンダー平等、フェミニズムにとっても重要です。重要ではありますが、トリクルダウンフェミニズム(短絡的な民主化がジェンダー平等意識を生成したという)として捉えるのではなく、フェミニズムの内実に迫りながら、民主化とフェミニズムをみていきます。 Vol.2につながる、インターセクショナルフェミニズムー日本軍の性暴力(「慰安婦」問題、性奴隷制度)、米軍基地村、セクシュアルマイノリティ運動について考えていきます。 各回の紹介 第1回:4月17日(木)「朝鮮フェミニズムとは?ー原点としての植民地朝鮮の民族差別・ジェンダー差別・階級差別への抵抗」 <主な参考文献>尹錫男画、金伊京著 宋連玉・金美恵訳『​帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニストー独立運動を描きなおす』(花束書房、2024年) 第2回:5月1日(木)「韓国フェミニズム運動の原点ー労働運動と女性運動の相乗効果と限界」 <主な参考文献>金美珍『韓国「周辺部」労働者の利害代表―女性の独自組織と社会的連携を中心に―』(晃洋書房、2018年) 第3回:5月15日(木)「民主化運動とジェンダー平等ー裁くことが困難とされた多様な性暴力と軍加算点廃止に立ち向かう時」 <主な参考文献>『韓国フェミニズムの潮流』(明石書店、2006年) 第4回:5月29日(木)「被害者に優劣をつけた社会への告発ー日本軍「慰安婦」被害者の勇気、絶望そして希望」 <主な参考文献>李 娜榮著、梁澄子訳「連載:日本軍「慰安婦」問題解決運動史」『世界』(岩波書店 2016年、2017年) 第5回:6月7日(土)18時から ハイブリット開催 そのあと懇親会)「社会運動の基盤が阻むセクシュアルマイノリティ運動」 <主な参考文献>柳 姃希『あいまい化する〈当事者〉たち―韓国セクシュアル・マイノリティ運動から考えるコミュニティの未来』(春風社、2023年)。
  • 梁, 永山聡子
    アクティビストのための調査入門講座:フェミニスト視点で社会を変える知を創る【ふぇみ・ゼミ2024】, Nov 9, 2024, 一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ
    公文書とは、近代国家の要であり、官僚制度の根幹であり、公文書管理は民主主義制度を測る指標です。また文書に基づく制度は、 権力者・個人の恣意的な命令ではなく、誰もは理解できる形できちんと文書を作り、複数人の目(各部署)で確認し、決裁し、組織として決定することです。しかし、上記のような状態が失われると、権力者・ある一部の勢力、個人の「利益」誘導を可能にし、公の財産の基盤を失い、私たちの生命にも大きな影響を与えます。最も重要なことは、公文書によって「市民が政策決定プロセスを知る」こと(監視)です。従って、市民側も公文書改竄(かいざん)などを見つけ出す「読み取るスキル」を身につけてなくてはなりません。本講座では、公文書の基礎から、実際の公文書改竄事例(森本学園問題など)、他国の現状、今、市民にできること、さらに講師が関わってきた「公文書」分析/「公文書」作成について、ダイジェストで報告します。
  • 梁, 永山聡子
    セクシュアリティを考える集い, Feb 23, 2025, 日本キリスト教教団兵庫社会部委員会  Invited
  • 梁, 永山聡子
    「なぜフェミニズムは社会を変えられないのか?~日本で闘えない幾つかの理由」【ふぇみ・ゼミ2024】, Aug 19, 2024, 一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ
    日本社会において性差別・家父長制の根源は、天皇制、戸籍制度の温存です。しかしながら、天皇に女性がなれないことを問題にするフェミニズムがあり、戸籍制度の温存を肯定する「婚姻をする」フェミニズムがあります。他方で、戸籍から排除されている外国籍者、割り当てられた性別を変更したい人、婚姻制度に適応されない同性愛者への構造的差別は継続しています。本来であれば、フェミニズムは、その構造的な差別を解体しなくてはならないのに・・・。そうしたフェミニズムに陥らず、社会を変革するためのフェミニズムを実践するために、いま何が足りていないのかを考えます。
  • 梁, 永山聡子
    『映画が映す東アジア~ジェンダー、セクシュアリティ、社会』, Jan 30, 2024, 一般社団法人 ふぇみ・ゼミ&カフェ

Teaching Experience

 27

Professional Memberships

 6

Research Projects

 8

Academic Activities

 3

Social Activities

 12

Media Coverage

 7
  • 月刊『同朋』, https://books.higashihonganji.or.jp/item/IbtocN11444.html, Aug 1, 2025 Newspaper, magazine
    試し読み https://books.higashihonganji.or.jp/shop/btoc/prdct/01/14/44/SD202508.pdf#page=5
  • 共同通信, https://www.47news.jp/12692410.html, Jun 8, 2025 Newspaper, magazine
    東京・赤羽のマンションの一室で、連日、若者たちが集まるフェミニズム講座が開かれている。2017年に始まった「ふぇみ・ゼミ&カフェ」では、年間100回ほどの講座に延べ5千人以上が参加する。 テーマは「あらゆる差別をなくす運動をつくる」。ジェンダー、セクシュアリティー(性の在り方)、在日外国人、歴史問題と、幅広い視点からフェミニズムを学ぶ。 旧日本軍「慰安婦」問題も、重要なテーマの一つだ。慰安婦だった女性たちが沈黙を破って被害を告白し、日本政府に損害賠償を求めた訴訟では、請求権が消滅する「除斥期間」が過ぎたなどとして負け続けた。講師は問う。「被害を受けた時にすぐ告発しなければ、罪じゃなくなるのか」 慰安婦だった女性らは「自分の選択が悪かった」と自らを責め続けた。勇気を出して被害を告白すると、「うそつき」「売春婦」などとひどいバッシングも受けた。 現在の性被害にも共通する点があると、講師は指摘する。世界に広がった「#MeToo」運動は、性暴力は重大な人権侵害で、悪いのは加害者であり社会だと訴える。「ふぇみ・ゼミ」に集まる若者たちは、慰安婦問題をどう受け止めているのだろう。(共同通信=角南圭祐、写真は坂野一郎、角南圭祐) 「インターセクショナリティー」の視点 ふぇみゼミの講師は、学者や社会運動家、LGBTQ当事者など多様だ。全講座オンライン同時配信、字幕付きで、全国に参加者がいる。 持続可能な運動を目指すため、運営、字幕スタッフに給料を払っているのが、社会運動として特色といえる。2022年には一般社団法人化した。 運営委員の1人、成城大客員研究員の梁・永山聡子さん(社会学)は、ゼミの狙いをこう話す。「日本のフェミニズムは、女性の地位向上を目指すものが一般的です。一方でふぇみゼミは、民族、セクシュアリティー、出身、障害、階層などの差別が重なり合う『インターセクショナリティー』の視点で、歴史からつくられた不平等な社会構造に注目します。不平等や差別を見抜き、止める人を育てたい」 ▽「差別の核心がある」 慰安婦問題を取り上げるのは、なぜか。梁さんが答えた。 「差別の核心があるからです。『慰安婦は朝鮮人だから、中国人だから、遊郭で働いていた人だから、いいだろう』と、日常の差別が積み重なり、慰安婦が存在していた。慰安婦制度が始まったのも怖いけど、それを是認して続いたことも怖い」 「なぜあんな前代未聞の制度を、同じ人間がつくったのか。なぜ当時の日本が、そんな社会構造、価値観になったのか。単純な戦時性暴力問題ではない。日本の構造があります。繰り返さないためには、それを知る必要があります」 慰安婦制度とは、何だったのか。日本政府はどう認定しているのか。 ▽河野談話 80年前に終わったアジア太平洋戦争で、日本軍は各地の戦線に慰安所を設け、日本人や植民地の朝鮮人、占領した地域の女性を集め、将兵との性行為を強要した。日中戦争のはじめ頃、現地女性への強姦事件の多発や、兵士に性病が流行したための対策などとされる。 日本政府の慰安婦問題への見解は、1993年8月の「河野談話」を歴代内閣が踏襲する姿勢を表明している。 当時の宮沢内閣の河野洋平官房長官が、オランダ人女性を強制連行した裁判記録や、韓国人被害者、元慰安所経営者らへの聞き取り調査、韓国政府の報告書などを基にまとめた談話だ。 慰安所は「軍当局の要請により設営され」、管理や慰安婦の移送は「軍が直接あるいは間接にこれに関与した」とした。募集は「軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、甘言、強圧によるなど、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、官憲が直接加担したこともあった」と強制性を認め、「おわびと反省」を表明した。 ▽バックラッシュ 慰安婦問題がクローズアップされたのは1990年代からだ。戦争責任、女性の人権、歴史認識の問題として解決を求める機運が高まった。 と同時に、右派からの激しいバックラッシュも起きた。強制性を否定したり、金を稼ぐ売春婦だったとおとしめたりして問題を矮小化しようとする論が力を増している。 ▽なぜ語りにくいのか 2023年5月にも、ふぇみゼミは慰安婦問題を取り上げた。「私たちはなぜ『慰安婦』問題を語りにくいのか?」をテーマに、梁・永山聡子さんが講義した。 「慰安婦問題を学ぶことは、戦争や性暴力を自分事として考える機会です」 梁さんが強調したのは、自分には関係のない、80年前の昔のことではなく、自分が生きている社会が性差別にどう立ち向かうのかというジェンダー構造の問題だということだ。帝国主義、植民地支配、軍の仕組み、アジア蔑視など、慰安婦問題が含むものには「今の日本社会の構造の源泉がある」と説明した。 ▽今に通じる課題 講義は続く。日本で1990年代に始まった戦後補償裁判では、被害者側の敗訴が続いた。「除斥期間」の経過などの理由だ。しかし、と梁さんは言う。 「被害を受けた時にすぐ告発しなければ罪じゃなくなるのか。もう裁けないのか」。例えば今、父親から性暴力を受け続けた女性が成人してから被害を訴えたり、旧ジャニーズ事務所の所属タレントたちが過去の性被害を訴えたりという事例がある。「今になってやっと語れる」という視点から、「除斥期間」に正当性があるかどうかを考えることもできる。 慰安婦にされた女性たちの多くが、自分を責め続けた。「自分が親の言うことを聞かなかったから」「あの時、家出をしたのが悪かった」。梁さんは指摘する。「そうではなく、加害者と社会に責任がある」。これも近年の「#MeToo」運動が示してきたことだ。 戦後になって、日本、韓国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、東ティモールなど、多くの国や地域で慰安婦とされた被害女性たちが声を上げた。梁さんは言う。「多くの被害女性たちの言葉を丁寧に拾ってきた運動がある。しかし、被害者の言葉を信じない人もいた。今もいる」 現在にも共通する問題に、受講生たちはうなずいた。 ▽避けて通れない 講座を受ける若者たちは、どう考えているのだろう。2025年1月、講座を受け、運営スタッフとしても関わってきた20代の男女3人にインタビューした。 4月から新社会人となった小西響子さんはこう話した。 「慰安婦問題は韓国との問題ではなく、本来は加害者側の問題です。サバイバー(元慰安婦)の証言を読んだことも聞いたこともない人たちが、歴史修正主義的な考えを持ってしまう。正しい情報を伝える手段を増やす方法を考えたい」 大学院生の山道未来さんは「小学校の担任が『韓国政府はお金目当てでまだ謝罪を求めている』と話すのを聞いて、しばらくそう信じてしまっていた。被害者が訴えてきたことが見えていなくて、日韓政府対立の問題だとしか考えられていなかった」と振り返る。 しかし、ふぇみゼミでの学びを通し、今はこう考えている。 「組織の中の暴力を考える上で、日本軍の戦時性暴力は重大なトピックです。権力関係を問い直していく運動がフェミニズム。男女の関係、ジェンダーだけでなく、日本とアジア、戦時中の加害と被害も、フェミニズムは問います」 社会人になってもふぇみゼミに通う石田凌太さんも、フェミニズムの大切さを訴える。 「日本に住んでいてフェミニズムを学ぶなら、慰安婦問題は避けて通れません。その視点がないとおかしい。日韓の政治の枠だけではとらえきれません。人権問題の入り口として、もっと多くの人に関心を持ってほしい」 今夜も、赤羽のふぇみゼミ講座に人が集まっている。
  • 朝日新聞, 朝日新聞, Nov, 2023 Newspaper, magazine
  • 朝日新聞, 朝日新聞・web論座, https://webronza.asahi.com/culture/articles/2021033100004.html, Apr 1, 2021 Internet
  • 今、憲法を考える会, 『ピスカートル』, Mar, 2016 Promotional material