梶谷 令
多摩美術研究 (8) 3-23 2019年7月 査読有り
本稿は、「版画のための素描」とこの延長に位置する油性木版画という異なる制作次元を統一営為として展開する筆者の制作プロセスを、制作者自身で横断的に概説する。モノクロの次元を超克し、版画で初めて色彩を可能にした筆者の作品は「都市における」という絆を前提し、都市空間における作品存在と制作者を結び付ける。作品の色彩は制作者自身によってではなく、都市生活から与えられ贈られた「発生的なもの」として振る舞う。作品自体は「お守り・護符・ギフト」として、展示を通じて社会参加する。作品はこの歴史的役割(制作者の死去以降も作品が保存・展示されること)を持続可能なものとするために、制作者の代理的象徴及び、都市空間の綜合的・非人称的象徴として顔貌を託されており、この顔貌が「見守ること、贈ること」を担っている。本稿は、こうした自作の理念的側面を、卑近な博士制作を手掛かりに分析することで自作考察の布石を構成する。