木村 勇気, 稲富 裕光, 田中 今日子, 真木 孝雄, 三浦 均, 左近 樹, 野沢 貴也, 塚本 勝男
日本結晶成長学会誌 39(2) 68-74 2012年7月
宇宙には多量のナノ粒子(宇宙ダスト)が存在しており,惑星形成や分子生成に対して重要な役割を担っていることから,その生成過程の理解,組成,サイズ,個数の見積もりは,惑星科学,天文学において最も重要な課題の一つとなっている.宇宙ダストは主に星が最期を迎える際に放出するガスが冷却,凝縮することで均質核生成を経て生成する.その為,均質核生成の"使える"理論と実験による物理パラメータの決定が不可欠である.最近の地上実験から,半現象論的核生成モデルが実験を良く説明できることが分かってきた.また,微小重力環境を利用したガス中蒸発法により,これまでより幅広い宇宙ダストの生成条件を再現できる.これにより,天体進化に伴う宇宙ダストの生成,変成過程をより正確に見積もることが可能になると期待している.我々は,ナノメートルサイズの宇宙ダストの生成過程を理解するには,ナノの特異性の考慮と宇宙での結晶成長実験が不可欠であるとの視点から研究を行っている。ここでは,その一つとして核生成の"その場"観察実験について述べる.