研究者業績

関村 オリエ

セキムラ オリエ  (Orie Sekimura)

基本情報

所属
東京女子大学 現代教養学部国際社会学科コミュニティ構想専攻 教授
学位
博士(社会科学)(お茶の水女子大学)

J-GLOBAL ID
201901015988561374
researchmap会員ID
B000378619

経歴

 3

受賞

 1

論文

 21

MISC

 21
  • 関村 オリエ
    CEL(Culture, Energy and Life) 134 20-25 2024年  
  • 関村 オリエ
    月刊「地理」 68(11) 8-9 2023年  
  • 関村 オリエ
    日本地理学会発表要旨集 2023a 82 2023年  
    1.震災と陸前高田 2011年3月11日に起こった東日本大震災において,陸前高田市は大きな被害を受けた.市内の津波浸水面積は約13㎢にもおよび,人口24246人のうち津波による犠牲者は1761人(行方不明者を含む),被災市町村全体の中で宮城県石巻市に次ぐ数となった.家屋は,市内全世帯(8075世帯)の99.5%(8035世帯)が被災,全半壊合わせて50.1%に達した(陸前高田市2014).市職員約400名のうち111名が犠牲となり,被災後の支援者や専門家の受け入れは困難を極めた(中井ほか2022).被災地域の復興の課題の中で,あらゆる世代に共通する重要な課題のひとつとして,住宅をめぐる問題がある.被災後の住宅の確保をめぐっては,①一時的な避難所への避難,住宅の減失を受けた場合には,②都道府県が提供する仮設住宅や借り上げ住宅への入居を経て,③恒久的住宅へと移行することが一般的である.ただし,新たな住宅確保が達成されたとしても,個人のレベルでは震災により家族や親族,隣人など身近なひとを亡くした喪失感,心身の健康障害,被災後の災害関連死など生活上の課題,社会関係再構築などの課題も残る(吉野編2021). 本報告では,陸前高田の復興過程における住宅と社会関係をめぐる問題を検討するために,特に災害公営住宅とそこに入居した人々に注目し,震災後の生活における課題と可能性について考察したい. 2.避難所から仮設住宅,その後の住宅再建 陸前高田市では,2011年5月より各避難所から市内に建設された仮設住宅への移転を開始した.当時を知る米崎コミュニティ協議会会長の話によれば,仮設住宅には,米崎町民が8か所に分かれて住み,家に戻れずとも皆,馴染みの地区と隣人に安心感を持っていたという.家屋が無事だった町内の人たちも,頻繁に米崎町の仮設住宅に足を運び,仮設に暮らす人たちの支援に取り組んだ,と振り返る.実際,米崎町内の仮設住宅には,震災前より地域に暮らしていた人々が入居者の70%を占めていた(宮城ほか2020:10).2012年より仮設住宅以降の住宅再建を視野に入れた話が進められた.6月には「陸前高田市災害公営住宅供給基本方針」が策定され,災害公営住宅700戸(県営),300戸(市営)の計画が開始された.防災集団移転事業については,2012年7月に協議会が設立され,翌年には気仙町(長部)と広田町での防災集団移転の造成工事が始まり,防災集団移転事業27団地のうち1/3が完成した.2014年6月には,市内で最初の災害公営住宅(下和野団地120戸)の募集が開始された.これら防災集団移転事業や災害公営住宅の建設により仮設住宅からの転出が始まり,市は,2016年4月に47か所の仮設住宅の撤収・集約化の方針を公表した. 3.仮設住宅からそれぞれの住宅へ 仮設住宅から新たな住宅確保に向けた動きの中で,高台などへの防災集団移転では、町内の同じ地区住民同士の移転がほぼ実現されたという.だが一方で,防災集団移転事業の長期化により自主再建などで地区外に転出した人,経済的な事情により住宅再建を断念した人たちも多数いた.後者の人々は,近隣の災害公営住宅(以下,A災害公営住宅)に転居し,2017年8月末に米崎町の仮設住宅は解体された.A災害公営住宅へ移り住んだ人たちのもとへは,米崎町の地区住民から敬老会や頼母子講,「お茶っこ」,りんごまつりなど折を見て行事の誘いをし,積極的に交流に努めているという.ただし,距離や年齢的な問題で,どうしても縁遠くなってしまった人たちもいたとのことであった. 4.災害公営住宅居住者の新しいつながりと場所 それでは,地区(集落)の人々とともに暮らした仮設住宅から離れて住宅を得た人々は,どのような生活を送っているのだろうか.A災害公営住宅へと移り住んだ人々から聞かれた,新たな生活についての話を検討した.「仮設時代の仲間がお酒飲みに集まることがある.ここだって高田から来た人もいる.地区とか無しに皆,津波で流されてしまったから(Bさん/80代男性)」.別の居住者は,次のように話した.「皆離れ離れになってしまったけれど,今は若い人たちからパワーをもらえる.一緒にお茶っこできればと思い,女性ひとりで男性を誘うと『妄想』を語る人がいた.(略)ここに来て,男も女も関係なく仲良くする.そういうことで良いと思うようになった(Dさん/80代女性)」居住者の話からは,既存地区との疎遠さや,匿名性の高さへの不安,孤独感,閉じこもりの問題が伺えた.また同時に,隣人・訪問者との新たなつながりや,自己の新しい価値観を見出す実践も見られた.災害公営住宅という場所は,既存の帰属意識を確認する場ではなく,意思疎通を通じ新たな帰属の経験を獲得するような場にもなっていると思われる.
  • 関村 オリエ, 熊谷 圭知, 久木元 美琴
    日本地理学会発表要旨集 2023s 305 2023年  
    1.女性たちの関係性 報告者は,ジェンダーの視点により,近代家族を下支えとした都市の職住分離構造やそこに計画された空間である郊外における住民の実践に注目し,都市空間の変容を考察してきた(関村2018).その中では,お互いを支え合う女性たちの関係性がカギとなってきたが,こうした関係性が都市空間の変容にとっていかに重要なものであるのか,その意義を十分検討するには至っていなかった. レスリー・カーン(2022)『フェミニスト・シティ』では,著者自身の経験より,女性同士の絆や友情を通じて「世界をつくる」ことが,家父長的秩序が支配的である都市空間を変更するために有効であると繰り返し示されている.これまでフェミニスト地理学においても指摘されてきたように,建築や都市計画においては,「標準的人間」として男性(男の子)がユーザーとして想定され,それ以外の存在,たとえば「標準」とは異なるからだや役割を持つとされる女性(女の子)は想定されてこなかった.それゆえ都市空間は,彼女たちにとってはアクセスも居心地も悪く,身の安全を確保することも容易ではなかった.こうして周縁に追いやられている女性たちが,都市空間に自分たちの居場所をつくり出すためには,女性同士の友情が必要である,とカーンはいう. 本報告では,『フェミニスト・シティ』「友達の街(City of Friendship)」における女性同士の友情についての議論をもとに,地理学,特にフェミニスト地理学においても取り上げられることが少なかった女性たちの関係性に焦点を当て,都市空間の再構築の可能性について考察したい. 2.女性の友情と都市 女同士の友情は,これまで「物語の小道具」としてみなされるか,「恋愛関係の代用品」,「(特に男性パートナー不在の場合)それを補うもの」として位置づけられてきた.そもそも男性を中心としたホモソーシャルな社会においては,「すべての女は男への帰属をめぐって潜在的なライバル関係に置かれるため,女同士の間には,原理上『友情』は成立しないことになっている」(上野2010:235)ため,女性の友情は,その存在すら認められてこなかった.こうした神話やステレオタイプは,女性たちが関係性を深め,お互いに力を合わせて自身や都市空間を変えていくための「足枷」になっている(カーン2022:86). 『フェミニスト・シティ』の著者カーンは,カナダ・トロントの出身であるが,幼少期にはトロント郊外のミシサガという街に育った.郊外でティーンエイジャーになったカーンは,成長とともに自宅の寝室や地下室など幼い頃から遊び場にしていた空間に退屈し,外への興味を抱くようになる.加えて彼女にとって郊外は,常に両親や教師などの詮索的な視線を受け,どこかプライバシーのない空間となっていた.それゆえこうした視線から逃れ,匿名でいられるストリートなどの公共空間にこそ自身のプライベートがあると感じ,都市への憧れを深めていく.ある夜,映画を見るためにカーンは友人とふたりでトロントの街へ内緒で出かけていく.いつの間にか所持金を無くしてしまった二人は,ポケットに残る硬貨で24時間営業のコーヒーショップに入り,始発を待つことになった.彼女はこのときの思い出を次のように振り返る.「都市のまったく新しい姿に触れること,自分たちの限界を試すこと,そして街は時に自分たちの味方をしてくれるという感覚…都市で自由になることが可能だと私たちに教えてくれたのは友情だった」(カーン2022:90) 3.「女の問い」 友人との冒険後も,幾度となく新たな世界を開いてくれた女性同士の友情(つながり)と都市の存在を確認するカーンだったが,一つの問いに突き当たる.それは,都市における利害を共にする,さまざまな女性たちへの配慮,つまり「女の問い」であった.家庭内で孤独を深める女性,ジェントリフィケーションにより居場所を失うクィア女性,何かにつけて取り締まりを受ける有色人種の女性.白人女性であるカーンは,自らの特権性の問題に直面しながら考えていた.「どうすれば私たちは空間,とりわけ都市の空間を創り出したり変えたりして,人生にわたって私たちを支えてくれるような関係性を実践し,維持できる可能性を押し広げられるか」(カーン2022:118) 4.インターセクショナリティの視点 都市空間における女性の友情とは,そのものが資本主義イデオロギーへのカウンターであり,独自のエコノミーである.フェミニスト・シティとは,女性,先住民,クィア…多様な関係性を改めて中心に据え,それらを尊重し,育み合っていくことができる街のことであり,これは都市空間の変容に向けた非常に重要な指摘である.
  • 関村 オリエ
    人文地理 72(1) 50-106 2020年  
  • 関村 オリエ
    日本地理学会発表要旨集 271 2019年  
  • 関村 オリエ
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2019 46-47 2019年  
  • 関村 オリエ
    人口学研究会紀要 55 12-13 2013年  
  • 関村 オリエ
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2012 74-75 2012年  
  • 木村 オリエ
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2009 71-71 2009年  
  • 木村 オリエ・熊谷 圭知
    F-GENSジャーナル 10 160-163 2008年  
  • 木村 オリエ・熊谷 圭知
    F-GENSジャーナル 7 195-197 2006年  
  • 木村 オリエ
    日本地理学会発表要旨集 2004 228-228 2004年  

書籍等出版物

 6

共同研究・競争的資金等の研究課題

 7