田中章浩, 森浩一, 小泉敏三, 佐藤裕, 田内光
Audiology Japan 48(1) 72-78 2005年3月 査読有り
人工内耳は一般に音韻の聴取が良くなるように設計・調整されており, 韻律の聴取は必ずしも良くない上, 音韻聴取に干渉する可能性もある。本研究では成人人工内耳装用者 (N24, SPEAK) を対象に単語聴取試験を行い, 1) アクセント型が音韻聴取に与える影響, 2) 音圧が音韻およびアクセント型の聴取に与える影響について検討した。提示音圧は快適レベルの前後に4レベル設定し, 試験単語には2モーラの有意味語に2種類のピッチアクセント (高低型, 低高型) を付与した語を使用した。その結果, 同じ音韻でもアクセント型や音圧の違いによって異なる音韻に異聴する例が認められ, 音韻と韻律の相互作用が示唆された。アクセントの聴取成績は提示音圧で有意差を生じなかったが, 音韻聴取は音圧上昇に伴って向上した。術後の訓練では種々のアクセントや抑揚を含んだ発話を訓練材料に含める必要があることが示唆された。