糟屋 美千子
社会言語科学 14(2) 31-44 2012年3月 査読有り
本稿は,2008年7月に実施された「全国一斉休漁」についてのテレビニュースを微細に分析することにより,テレビニュースのディスコースが考え方の枠組をどのように構築しているかを明らかにし,その問題点を検討した.分析の手法としては,クリティカル・ディスコース・アナリシスを用い,まず,ニュース全体をみて,ディスコースの様々な要素(情報の選択,話の展開,語彙・語法,テロップ・映像)について,特定の考え方を作っているとみられる部分を抽出した.そして,これらの要素を,ニュース全体の話の流れに沿って総合的に検討し,どのように考え方の枠組が構築されているかを考察した.その結果,本ニュースは,これらの要素が組み合わさることにより,漁業者が実施した一斉休漁をテーマとしながらも,消費者や市場の立場を中心とした考え方の枠組を構築していることがわかった.また,考え方の枠組がどう構築されているかは,(1)登場人物の属性,(2)重みづけ,(3)因果関係の3つの視点から検討すると分析の手がかりになることがわかった.