近藤 香奈恵, 李 廷秀, 川久 保清, 中出 麻紀子, 森 克美, 赤林 朗
肥満研究 13(2) 143-153 2007年8月 査読有り
目的:食事の多様性とバランスを評価する簡便な評価方法を提案し,その方法を用いてメタボリックシンドローム(MS)の食事の多様性とバランスを評価し,提案した方法の有用性を明らかにすることを目的とした.方法:厚生労働省のヘルスアップモデル事業参加者491人を研究対象とした.郵送法にて食物摂取頻度調査とその他の生活習慣調査を行った.身体計測ならびに血圧,血液検査は早朝空腹時に行った.日本のMS診断基準を用い,ウエスト周囲径に該当かつ項目基準の高脂血症,高血圧,高血糖のうち2つ以上に該当するものをMS群,ウエスト周囲径に該当かつ項目基準の1つに該当するものを一部該当群,どちらも該当しないものを非該当群とした.食事の多様性は「食事バランスガイド」の料理区分別食品群を使用し,摂取した食品群の種類を得点化した.得点が高いほど多様性があることとなる.食事のバランスは料理区分の目安量を用い,摂取量が目安量を満たすか否かを判断し得点化した.得点が正の場合は目安量を上回り,負であれば目安量を満たしていないこととなる.分類した3群の食事の多様性得点,バランス得点とともに食品群別摂取量,栄養素等摂取量,その他の生活習慣を男女別に比較検討した.結果:男性では非該当群11人(15.7%),一部該当群27人(58.6%),MS群32人(45.7%),女性では非該当群101人(24.0%),一部該当群235人(55.8%),MS群85人(20.2%)であった.年齢,BMI,総エネルギー摂取量を調整した共分散分析の結果,食事の多様性の得点は男女とも群間に有意な差はみられなかった.料理区分ごとのバランス得点は,男性では主食で非該当群に比べ一部該当群とMS群の得点が負の値で有意に低かった.牛乳・乳製品バランス得点は一部該当群のみ負の値で,非該当群に比べ有意に低かった.主菜,副菜,果物バランス得点では有意な差はみられなかった.女性では主菜で非該当群に比べMS群の得点が正の値で有意に高かった.主食,副菜,牛乳・乳製品,果物バランス得点では群間に有意な差はみられなかった.料理区分別のバランス得点は食品群別摂取量,栄養素等摂取量,各種臨床検査値とも妥当な相関関係であった.結論:食事の多様性とバランスを評価する簡便な方法を提案し,MS群と一部該当群の食事の特徴を非該当群と比較することで明らかにした.その結果,食事のバランスの指標により男性の一部該当群とMS群では主食バランス得点が低いこと,女性のMS群では主菜のバランス得点が高いという食事の実態が明らかになった.食事のバランスの評価指標は食品群別摂取量,栄養素等摂取量のみならず臨床検査値とも妥当な関連を示し,算出が簡便であることから,食事全般の評価方法として有用であることが示された.食事の多様性の指標についてはさらなる検討が必要である.(著者抄録)