藤井 健作, 酒井 龍矢, 横谷 祥史, 棟安 実治, 森本 雅和
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. A 96(5) 205-214 2013年5月1日
本論文では,参照信号にわずかに含まれる独立成分を最大限に活用する周波数領域2チャネル適応アルゴリズムの一つを提案する.2チャネルシステムでは両参照信号間に強い相関が存在する場合において未知系の同定が困難になるという問題がある.その対策として二つの方法が知られている.一つは,参照信号に独立成分を加える方法,あと一つは両参照信号に含まれる独立成分を抽出して利用する方法である.このうち,前者には能動騒音制御装置への適用が構造上困難という問題があり,後者には独立成分の抽出のための演算量が多いという問題が指摘される.本論文では,後者にブロック実行型周波数領域アルゴリズムを適用することによって独立成分の抽出に必要な演算量が大幅に削減されることを示す.更に,後者を時間領域適応アルゴリズムに適用して実行する場合よりも,本手法によれば同定速度が向上することを計算機シミュレーションによって例証する.