中出 麻紀子, 森本 雅和, 新居 学, 中西 永子, 笹嶋 宗彦, 小野 博史, 河野 孝典, 谷田 恵子, 坂下 玲子
Phenomena in Nursing 7(1) R10-R19 2023年
【目的】本研究では,2型糖尿病が強く疑われる人とそうでない人の生活習慣の比較を行うことを目的とした。【方法】A市において2008年度から2019年度までに国民健康保険の健康診査を受診した30歳以上の男女のうち,解析項目に欠損がある人,既に生活習慣改善に取り組んでいる人を除く10,401名を解析対象とした。糖尿病が強く疑われる人を「HbA1c(NGSP値)が6.5%以上かつ/または血糖値を下げる薬の服薬ありの人」と定義し,χ2検定を用いて糖尿病の疑いの有無の2群間で生活習慣の比較を行った。その後,糖尿病が強く疑われる/それ以外を従属変数,各生活習慣項目を独立変数,性別と年齢で調整した二項ロジスティック回帰分析を行った。解析は65歳未満と以上で行った。【結果】二項ロジスティック回帰分析の結果,65歳未満の対象者においては,日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していない人,他の人と比較して食べる速度が速い人,就寝前の2時間以内に夕食をとることが週に3回以上ある人は,そうでない人と比較して糖尿病が強く疑われる人のオッズ比がそれぞれ1.69倍(95%信頼区間:1.22-2.32),1.31倍(1.01-1.72),1.52倍(1.12-2.07)であった。一方,お酒を時々あるいは毎日飲み,かつ1日当たり1~2合飲む人では,ほとんど飲まない・飲まない人と比較して糖尿病が強く疑われる人のオッズ比が0.65倍(0.46-0.92)であった。65歳以上の対象者では,日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していない人,ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速くない人,他の人と比較して食べる速度が速い人は,そうでない人と比較して糖尿病が強く疑われる人のオッズ比がそれぞれ1.41倍(1.18-1.70),1.21倍(1.01-1.45),1.29倍(1.09-1.53)であった。【結論】本研究より,糖尿病予防のためには65歳未満,65歳以上の人に共通して身体活動を行うこと,早食いをしないことが重要であり,加えて65歳未満の人では就寝前2時間以内の夕食摂取に注意すべきことが示唆された。(著者抄録)