畠山 卓也, 西池 絵衣子, 竹林 令子, 岡 京子
日本精神科看護学術集会誌 66(2) 13-17 2024年9月
本調査の目的は,「療養生活継続支援加算」を算定している精神科医療機関の支援担当者を対象とし,「療養生活継続支援加算」の算定状況と導入前後における課題の把握することである。Google Formsを用いた質問紙調査を行った。調査対象施設は「日本精神科看護協会の会員施設」であり,かつ「精神科外来を開設している施設」である1,220施設に調査協力依頼を行った。施設長が本調査の主旨や目的に合意した場合,【療養生活継続支援加算】の支援担当者のなかから精神保健福祉士と看護師各1名に協力を依頼し,協力依頼を受けた支援担当者のうち,本調査の協力に合意が得られた者を研究協力者とした。(1)基本属性,(2)【療養生活継続支援加算】を多職種で担当することについて,(3)【療養生活継続支援加算】の支援担当者としてかかわっている患者とその対応について,(4)【療養生活継続支援加算】について実施上の課題(導入前・導入後)とした。倫理的配慮として,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」にもとづき配慮した。本調査の遂行にあたっては,駒沢女子大学看護学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(2023年2月10日承認,承認番号:2022-N3)。調査対象とした精神科医療施設のうち,調査に協力の得られた研究協力施設は12施設(1%)だった。本調査に協力の得られた「療養生活継続支援加算」の支援担当者は,精神保健福祉士が8名,看護師が8名だった。16名の支援担当者から報告された担当患者は38ケース(精神保健福祉士:18ケース,看護師:20ケース)だった。精神保健福祉士の担当ケースのGAFの平均値は57.8(35-80,12.1),看護師の担当ケースのGAFの平均値は54.9(15-80,18.86)であり,担当しているケースの重症度に差異はなかった。支援担当者は,職種の違いによる役割や対応内容について,おおむね異なっているという認識をもっていた。看護職が担う役割は,(1)日常生活に関する支援,(2)精神状態の観察と管理,(3)セルフケア・アプローチ,(4)医学的知識と身体面へのアプローチ,(5)看-看連携,(6)医師との調整(連携)という6つの役割に大別された。支援担当者が導入前に感じていた課題は,(1)導入に向けた準備,(2)利用対象者への説明,(3)人的資源の確保,(4)直接支援の内容の4点があがっていた。一方,導入後の課題としては,(1)利用対象者側の課題,(2)支援を実施するためのシステム的な課題,(3)支援期間の短さと支援を継続するための課題,(4)支援担当者側の課題,(5)診療報酬としてのメリット導入に向けた準備の5点があがっていた。(著者抄録)