川村 教一, 瀧本 家康
日本科学教育学会研究会研究報告 35(5) 49-54 2021年3月7日 筆頭著者
筆者らは中学生・高校生12名を対象とした地球科学教育の一例として,ウェブ地図である国土地理院の地理院地図を用いて,外水氾濫の自然素因を見出させる授業を実践した.授業では,2019年の茨城県久慈川の水害および2004年の兵庫県円山川の水害における自然素因を見出させることを学習課題とし,地理院地図から地理情報を収集させた.収集した情報をもとにして想定される自然素因は何か生徒に発表させた.その結果,地理院地図の基本的な機能を活用する技能,地理情報をもとに推論する思考力・表現力・判断力等においてほとんどの生徒が達成目標に至ったと考えられた.また,自然災害の誘因,素因についてほとんどの生徒が理解を深めることができた.このように地理院地図は水害の学習に有効な場合があると考えられるが,水害の理解の深化のためには,誘因と自然素因の関係を学ばせることが今後の課題である.