奥村 和代
兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 24 13-25 2017年3月
本研究の目的は、急性期病院に勤務する看護師が「業務的」と認識する実践の様相を記述し明らかにする事である。急性期病院に勤務する中堅以上の看護師8名を対象とし、半構成的面接法による質的記述的研究を行った。面接では、自分や同僚が行っている事に対して、業務的と感じる場面や理由について具体的に語っていただいた。データは、業務的と認識する要素や、「業務的」と「業務的ではない」の区別は何によってされるのかという視点で、質的帰納的方法で分析をした。データを分析した結果、全体で128のコードから22のサブカテゴリーが生成され、そこから9カテゴリーに集約された。そして、業務的と認識する実践のコアカテゴリーとして、【専門的な判断】【患者に向かう姿勢】【看護師としての本来のありよう】【看護師同士の協働】の4つが見出された。自分の実践や同僚の実践を業務的であると認識するポイントは、実践に【専門的な判断】が含まれていない、【患者に向かう姿勢】が適切ではない、【看護師としての本来のありよう】とは違うということであった。中堅以上の看護師は、自分が思う専門職としての仕事を遂行していない、あるいは遂行できていないと感じる実践の状態を『業務的』と認識していた。それは、「何をするか」ではなく「やりよう」や「実践への向かい方」であった。「やりよう」や「実践への向かい方」は看護倫理や看護の専門性に即しているか否かで判断されていた。また、実践が本質的には看護であっても、自分のしている事を認識できずに、自分が思う専門職としての仕事を遂行していないと感じている可能性が示唆された。(著者抄録)