高田英資, 広田義和, 前田嘉道, 武尾正弘, 石井泰博, 白井邦郎
日本畜産学会報 67(11) 1010-1017 1996年11月 査読有り
回収牛毛を可溶化して,膜などの構造材料として利用出来る分子量の大きい可溶性タンパク質を得るために,亜硫酸ナトリウムで前処理し,パパインまたはトリプシンを用いる酵素還元加水分解法(SP法)およびアルカリ加水分解法により可溶化を行う場合の可溶化条件と可溶化タンパク質の理化学的性質を調べた.また,可溶化タンパク質の酸沈澱における挙動についても検討を加えた.SP法(パパイン)では可溶化率約44%,最終収量は22.2%で可溶化タンパク質を得た.トリプシン使用の場合には,それぞれ39%および8.4%であった.また,アルカリ加水分解法では93%および49%であった.SP法およびアルカリ加水分解法により得られた可溶化タンパク質の酸沈澱における溶解度曲線は異なったパターンを示した.両可溶化タンパク質とも共通して酸不溶性画分(沈澱物)より酸可溶性画分(上澄み液溶解物)の方が多く,また,SP法由来の酸不溶性画分はアルカリ加水分解法由来のそれに比べ,多く存在した.SDS-PAGE, SEC-HPLC分析により分子量組成を調べたところ,それぞれ2~3の画分がみられ,分子量として15KD~25KDのものが多い.アミノ酸組成はSP法による可溶化タンノパク質中にはランチオニンが多く存在し,アルカリ可溶化物では比較的少なかった.SP法とアルカリ可溶化物と比べると,システイン酸,セリンおよびプロリン等が多く,アルカリ可溶化物はセリン,トレオニンおよびランチオニンが少ないことが認められた.