江崎保男, 橋口大介, 金沢正文, 今堀るみ子, 池田善英
日本鳥学会誌 48 48(4) 267-279 2000年 査読有り
1)京都府南部の丘陵地域に約40km2の調査地をもうけ,オオタカの目視調査を1年間おこなった.丘陵部はアカマツが混じりコナラを主とする山林,平地部は農耕地と市街地であった.<br>2)オオタカは周年にわたって出現した.調査地中心部の約5km2の孤立林で1つがいが営巣し,繁殖に成功した.孤立林の外側には広い山林あるいは農耕地•市街地が虫食い状にまじる山林が存在したが,これらの場所には営巣つがいが存在しなかったと考えられる.<br>3)翼羽の欠損によりつがいのオスは個体識別ができたが,繁殖期にはこのオス以外のオスは確認できなかった.繁殖期を前半と後半に区分すると,オスの行動圏の大きさはそれぞれ6.8km2と10.8km2であった.<br>4)7月から8月にかけて出現した幼鳥は調査地内で巣立った個体であると推測されたが,巣立ち直後の7月には巣の付近でのみ目撃され,8月にはかなりよく動き回るようになり活動域が季節とともに拡大する様子がみられた.<br>5)オオタカの出現パターンやその他の状況証拠から,孤立林を含む調査地中心部は繁殖期にはつがいによって独占使用されていて,行動圏の大きさは5-10km2であったと考えられる.一方,非繁殖期には同じ地域が複数の成鳥オスや亜成鳥を含むオオタカによって非排他的に共同利用されていたとみられる.<br>6)孤立林は繁殖期のみならず周年をとおしてオオタカの生息の好適地であったと考えられるが,尾根にかこまれた比較的安全な巣場所を有することにくわえて,比較的大きな孤立林であること,かつ狩り場として適当な農地につつく林縁部を有することなどがオオタカに好まれる理由ではないかと推察される.