都丸 誠, 高野 裕久, 井上 健一郎, 柳澤 利枝, 越阪部 奈緒美, 安田 亜紀子, 島田 章則, 加藤 陽二, 植松 宏
日本トキシコロジー学会学術年会 33 98-98 2006年
【目的】大気汚染の重要な原因物質である浮遊粒子状物質の多くを占めるディーゼル排気微粒子 (DEP) の生体影響に関する研究はこれまで多くなされ、 肺気腫や虚血性心疾患等の生活習慣病がそれらに対する高感受性群であることが明らかにされてきた。しかし、生活習慣病の中でも糖尿病に関する知見は疫学報告を除くと存在しない。今回、2型糖尿病の病態を呈するdb/dbマウスにDEPの反復経気道暴露を行い、糖尿病への影響、特に脂肪肝に対する影響を検討し、加えてDEPが発生する活性酸素 (ROS) の役割を検討した。【方法】5週齢の雌性C57BL/KsJ-db/db (db/db) マウスと、対照群であるC57BL/KsJ-db/+m (db/+m) マウスに、100μg/animalのDEPまたはvehicleを隔週、18週齢及び24週齢まで気管内投与した。18週齢、24週齢で屠殺し、血液生化学検査、肝組織像、肝脂肪変性の定量化、脂質過酸化マーカーである抗Hexanoyl-lysine (HEL)抗体を用いた肝免疫組織染色等を検討した。【結果】db/dbマウスはdb/+mマウスと比べて、有意に血糖値、体重、肝重量が増加し、ASTやALTの上昇と,組織学的に脂肪肝が観察された。db/dbマウスにおいては、DEPの曝露により、vehicleを曝露されたdb/dbマウスと比較して、ASTの上昇や肝重量に増加が有意にみられ、ALTも上昇傾向があった。肝組織像でも、脂肪肝の重症度が増加していた。また、HELの発現も同様の傾向を示した。db/+mマウスにおいてはDEPの曝露とvehicleを曝露されたマウスの間で有意な差は認められなかった。【考察】DEPの経気道暴露は、2型糖尿病モデルにおける脂肪肝を増悪させ、そのメカニズムとして、酸化ストレスの関与が考えられた。