植野 和文
日本社会情報学会誌 13(.2) 17-28 2001年
この論文は滝野町が運営するコミュニティ・チャンネルの効果(以下,コミュニティ効果)に住民の視聴行動と地域アイデンティティがどのように影響しているかを論じた研究である。コミュニティ効果には町への関心を高める「関心効果」,町民の話題を増やす「話題効果」,そして町内の公的活動への参加を促す「参加効果」の3つの下位効果を設定した。さらに効果に影響を及ぼす要因として視聴行動では「番組接触」,地域アイデンティティでは「町への愛着」と「公的活動への参加実績」を取り上げた。研究は住民へのアンケート調査をもとに行われ,いくつかの興味ある知見を得た。(1)滝野町では地域コミュニティがうまく機能しており,コミュニティ・チャンネルは住民の高い評価を受けて地域メディアの役割を十分果している。(2)番組との接触が増えるほど,町への愛着が強いほど,そして公的活動への参加が多いほど,下位効果を認識している回答者は多くなる。(3)下位効果の認識いかんによって回答者は概ね3つの大きなグループを形成する。第一は3つの下位効果をすべて認識しているグループ,第二は「関心効果」と「話題効果」を認識しているグループ,そして第三はいずれの効果も認識していないグループである。(4)「関心効果」と「話題効果」の発現は相互に結びつく傾向が強い。そして「参加効果」の発現はその結びつきに大きく依存している。(5)コミュニティ・チャンネルは「話題効果」と一緒に「関心効果」を生み出し,その成果のうえに「参加効果」を生み出す。(6)「番組への接触」と「町への愛着」の間にはコミュニティ効果を生み出すうえで交互作用が存在する。つまり両者は互に影響し合いながら「関心効果」と「話題効果」の結合効果を生み出す。そして「公的活動への参加実績」はそれとは独立に結合効果のうえに「参加効果」を生み出す。(7)コミュニティ効果を高めるには,滝野町に相当あるいは幾分か愛着をもちながら番組をほとんど観ない住民と,番組を毎日あるいは時々観ているが滝野町にほとんど愛着をもたない住民を減らすか,あるいは公的活動によく参加する住民を増やして,ほとんど参加しない住民を減らすのが効果的である。