片岡 照雄, 小橋 昌司, 上浦 尚武, 畑 豊, 大和 一晴
電子情報通信学会総合大会講演論文集 1997(2) 441-442 1997年3月6日
MR脳画像同士の位置あわせは, 同じ脳疾患を持つ複数の患者の脳画像を重ねあわせることによって, 濃度値などの情報から共通する部位の異常を視覚的に捉えることが目的である. しかし, MR脳画像は大局的に見ると一様に見える部分であっても, 局所的には個々により異なる部分が多く, このことがMR脳画像同士の位置あわせを困難としている. 従来, 画像同士の位置あわせの方法がいくつか紹介されている. それらは, 画像の濃度値による相関関係による方法, 輪郭の曲率や変極点の位置情報による方法などである. 相関関係による方法のような対象画像の濃度値をもとに行われる方法は, 濃度値情報を取得するというMR脳画像を位置あわせする目的から使用することができない. また, これらの方法は対象画像の局所的な一致度に基づいて全体の位置あわせを行うものであり, 局所的に多くの部分が異なる脳画像の位置あわせに適用するのは困難である. 本文では, ラバー (ゴム) をモデル化した物理モデルを提案し, このラバーモデルを用いてMR脳画像の位置あわせを行う. ラバーモデルとは, 平面状のゴムを想定し, このゴムに歪みが加わったときのゴム全体の力学的な振る舞いをモデル化したものである. ラバーモデルでは局所的な変位が画像全体に影響を及ぼす構造をしており, 全体として協調しながら画像全体が移動するため, 大局的な位置あわせが可能である.