川野 圭朗, 小橋 昌司, 津森 洋平, 柴沼 均, 今脇 節朗, 八木 正義, 吉矢 晋一, 畑 豊
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 107(461) 457-462 2008年1月25日
ACL(anterior cruciate ligament; 前十字靭帯)損傷により生じる膝の回旋不安定性の評価手法として,主にpivot shift testが用いられる.同検査方法は簡便でACL損傷の程度と相関があり,今後の治療方針の決定に有用な指標であるが,同検査法は検者の主観的評価に基づいており,客観性,定量性が低いという問題点を有する.本研究では,小型で高時間分解能な慣性センサを用いた非拘束膝回旋不安定性定量化システムを提案する.同提案システムは,pivot shift test時の大腿部,下腿部運動を計測した時系列データの周波数解析により大腿-下腿の相対加速度を求めることで,pivot shift test現象の定量化を行う.本システムをACL損傷例1例に対して適用した結果,同時撮影したビデオ画像との比較により,pivot shift現象を正しく検出できたことを確認した.また,pivot shift現象時の大腿部に対する下腿部の相対運動の最大加速度は2.19±0.69m/s^2であり,検者の主観的評価であるGrade値との相関も示唆された.