井口美帆, 沈悦, 斉藤庸平, 山本聡
ランドスケープ研究 72(5) 611-616 2009年3月 査読有り
アトリウムとは、建築に付属しガラスで覆われた巨大な吹き抜け空間を指す。アトリウムは、大規模な公開型の内部空間という特性から建築内の全天候型の広場と例えることができ、誰もが利用できる空間として人々のコミュニケーションの場等に活用され、新しい都市空間としての可能性が認められている。近年は、環境に配慮した建築緑化の多様化が進み、アトリウムにおいても緑による修景効果や心理的効果、空気汚染浄化作用が認められ、室内環境の向上のため緑化が取り入れられており、アトリウムの利用満足度に貢献している。このようにアトリウムの緑化は都市の中での潤いの空間の創出に有効であると認識されてきている。一方、近年は人々の生活スタイルの多様化に伴い生活時間も多様化し、アトリウムの夜間利用の増大が想定される。このことからアトリウムの景観形成上、夜間のあり方の重要性が増すと考えられる。そこで、本研究では昼夜間両方の景観に着目し利用者の視点によるアトリウムの景観演出上の緑の役割と緑の捉え方、利用者に求められる緑の在り方を明らかにすることを目的とした。