丸山 尚子, 渡邊 真, 生野 浩和, 市川 裕一朗, 前田 佳照, 松岡 明美, 大久保 正明, 小村 成臣, 吉岡 大介, 鎌野 俊彰, 米村 穣, 田原 智満, 神谷 芳雄, 藤田 浩史, 中村 正克, 中川 義仁, 長坂 光夫, 岩田 正己, 柴田 知行, 平田 一郎
胃と腸 45(6) 1037-1045 2010年5月
患者は50歳代,女性.排便時の血液付着を主訴に当科を受診した.大腸内視鏡検査で横行結腸に径10mm大で,陥凹の中心にドーム状隆起を伴う,いわゆるIs+IIc型病変を認めた.NBI観察では,佐野分類でIIIA,広島分類でC1,昭和分類でirregularと診断した.ピオクタニンによる拡大観察では,pitの大小不同は認めたものの,辺縁不整,内腔狭小はあまり認めず,V<sub>I</sub>型軽度不整と診断した.超音波内視鏡では,隆起部で第3層の不整を認め,中心に低エコー領域があり,粘液や血管の存在が疑われた.以上の所見よりpSM-m癌を疑い,腹腔鏡下横行結腸切除術を施行した.病理組織学的には,粘膜内に限局した病変で,粘膜下層には動脈を主体とする大型血管の集簇を認めた.最終診断はwell differentiated adenocarcinoma(tub1),pM,ly0,v0で,リンパ節転移,遠隔転移は認めなかった.陥凹型早期大腸癌はSM浸潤率が隆起型に比較して高く,特に陥凹内隆起を伴う病変はSM深部浸潤を示唆する所見として重要とされている.今回,陥凹内に隆起を伴うが,組織学的にはM癌であった症例を経験したので報告した.(著者抄録)