菅原 裕子, 村田 唯, 池亀 天平, 嶋永 翔太, 竹岡 優将, 齋藤 竹生, 池田 匡志, 吉川 茜, 西村 文親, 河村 代志也, 垣内 千尋, 佐々木 司, 岩田 仲生, 橋本 衛, 笠井 清登, 加藤 忠史, 文東 美紀, 岩本 和也
精神神経学雑誌 121(4) 251-258 2019年4月
統合失調症(SZ)と双極性障害(BD)は遺伝要因と環境要因を共有することが知られており,複雑な遺伝環境相互作用が発症に関与すると考えられている.ゲノムワイド関連解析の結果,主要な精神疾患のなかでもSZとBDは遺伝要因の重なりが特に大きいことが知られているが,エピゲノム要因の重なりについては十分な検討がなされていない.本研究では,SZで行われた大規模なゲノムワイドメチル化関連解析(MWAS)で同定された上位5ヶ所の候補領域について,BD試料を用いた検討を行った.5ヶ所の候補領域のうち2ヶ所[FAM63B,染色体16番intergenic領域(IR in chr 16)]では,SZと同様に,BDにおいても有意な低メチル化状態が認められ,SZとBDに共通なエピゲノム要因である可能性が示唆された.また,1ヶ所(TBC1D22A)の領域では,SZとは異なり,BDでは健常者に比して有意な高メチル化状態が認められた.今後,BDを対象とした大規模なMWASによって,両疾患におけるエピゲノム要因の類似性や独自性の詳細がさらに明らかとなるであろう.(著者抄録)