堀口 明彦, 伊東 昌広, 石原 慎, 浅野 之夫, 荒川 敏, 古田 晋平, 志村 正博, 林 千紘, 神尾 健士郎, 安岡 宏展, 河合 永季, 東口 貴彦
胆と膵 39(11) 1201-1205 2018年11月
膵体尾部の病変に対する術式において注意すべき外科解剖につき概説した。膵体部は頭側が胃膵間膜、尾部が横行結腸間膜前葉に連続する膜に包まれた組織内に位置する。また、膵腹側は膵前筋膜、背側は膵後筋膜からなっている。膵後面と腎全面の膜はGerota筋膜と称され、膵後筋膜とこのGerota筋膜の間にはToldtの癒合筋膜(Toldt's fusion fascia)が存在する。MDCTによるDPAの分岐形態の検討では、脾動脈から分岐するタイプが40%、総肝動脈から分岐するタイプが25.7%、上腸間膜動脈から分岐するタイプが20.0%であった。膵体尾部の静脈は膵実質から脾静脈へ直接流入する数本の細い静脈とcentro-inferior pancreatic veinが重要である。centro-inferior pancreatic veinは膵体部下縁実質から脾静脈あるいは上腸間膜静脈へ流入する静脈であり、横行膵静脈と吻合枝を形成する症例もある。また、下腸間膜静脈が脾静脈へ流入する頻度は34%、脾静脈と上腸間膜静脈の合流部に流入する頻度は24%、上腸間膜静脈へ流入する頻度は42%と報告されている。(著者抄録)