高川 友花, 川部 直人, 橋本 千樹, 原田 雅生, 村尾 道人, 新田 佳史, 中野 卓二, 嶋﨑 宏明, 水野 裕子, 菅 敏樹, 中岡 和徳, 大城 昌史, 吉岡 健太郎
肝臓 55(5) 274-283 2014年5月30日
症例は70歳女性,C型肝硬変にて近医通院中に肝腫瘍を認め,肝細胞癌(HCC)が疑われ当科紹介となった.US上,肝S8,S3,S7に境界不明瞭な低エコー結節を認め,ソナゾイド造影USでは同部位が早期に染影され後血管相でdefect像を示した.CTでは肝S8に約5 cm,S3に約3 cm,S6に約2.5 cm大の境界不明瞭な淡い低吸収域を認め,動脈相で淡く濃染され平衡相でやや低吸収域を示した.EOB-MRIではこれらの病変を含め,肝両葉に早期相で染影され肝細胞相で淡い低信号域を示す多発性の腫瘤性病変を認めた.S3の腫瘍内には門脈の腫瘍内貫通像を認めた.PET-CTでは,肝両葉に多数の異常集積を認めた.HCCとしては非典型的であり,IL-2Rの上昇もみられたため肝腫瘍生検を施行.病理所見にてMALTリンパ腫と診断され,化学療法が導入された.肝MALTリンパ腫は稀な疾患であり,C型肝硬変を背景とした肝内多発病変である点,治療前に組織診断を行い化学療法導入が可能になった点で貴重な症例と考え報告する.