岩田 義弘, 長島, 圭士郎, 山口 浩志, 吉岡 哲志, 堀部 晴司, 岡田 達佳, 櫻井 一生, 内藤 健晴, 戸田 均, 門山 浩
嚥下医学 1(1) 197-203 2012年2月
正常嚥下において輪状甲状関節の存在意義を検討するため正常成人10名(平均年齢32歳:23〜45歳)を対象に超音波画像装置で甲状軟骨、輪状軟骨の運動を観察検討した。超音波画像診断装置のプローブと頸部の間に柔らかいキテコを間に挟んで観測した。甲状軟骨、輪状軟骨は鮮明に観察可能であった。安静呼吸時、喉頭挙上直前、喉頭が挙上、さらに下降開始の状態が観察できた。輪状甲状間は安静呼吸時には変化しなかった。空嚥下直前に輪状甲状軟骨間は安静時の平均19.0%の開大が見られた。喉頭鏡上から下降に移行する時、輪状甲状間は67.0%に短縮した。下降が開始すると輪状甲状間は65.0%に短縮し10例中5例に前後の滑走を認めた。甲状輪状間の開大は輪状甲状筋の弛緩と披裂喉頭蓋筋の収縮が関与していることが疑われた。嚥下初期に輪状甲状間が広がることは喉頭挙助直前に下咽頭食道入口部が広がることになり誤嚥を起こしにくぐする機構の1つと考えられた。(著者抄録)