堀口 高彦

気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)における治療の第一選択薬はいずれも吸入薬であり、必要不可欠である。その進化にはめざましいものがあり、わが国で保険適応のある吸入デバイスは12種類に及ぶ。その一方で薬剤選択の複雑さ、デバイスの違いによる吸入指導の煩雑さが問題となっている。多くの薬剤やデバイスのなかから、何を基準に選べばよいのか迷われる場合もあると考える。本稿では、12種類のデバイスの特徴を述べ、気管支喘息における著者のデバイス選択手順をフローチャートに示した。さらに吸入指導時の説明のポイントと、おもなデバイスの誤操作の問題点と対策を概説する。また全国の喘息患者が、どこの医療施設を受診しても一定レベルの吸入指導が受けられるように、デバイスごとの操作手順と指導ポイントを音声と動画で収録したDVDとポスターを作成したので紹介する。(著者抄録)

Fixed airflow obstruction患者の呼吸機能と呼吸インピーダンスを調べ、閉塞性換気障害の病因について検討した。fixed airflow obstructionを有する高齢喫煙者38名(男36名、女2名、平均75.0歳)を対象とした。患者の喫煙歴は10箱・年以上で、気管支拡張剤投与後の1秒間努力呼気容量(FEV1)/努力肺活量(FVC)は70%未満であった。肺の拡散能と吸入気管支拡張剤に対する気道反応性に基づいて、患者を4群に分けた。一酸化炭素拡散能(DLCO)80%未満で気道反応陰性患者をI群、DLCO 80%未満で気道反応陽性をII群、DLCO 80%以上で気道反応陰性をIII群、DLCO 80%以上で気道反応陽性のIV群とし、呼吸機能とインピーダンス指標を比較した。FEV1は、5Hz(R5)、20Hz(R20)、R5-R20における肺抵抗性と有意に相関していた。R5とR5-R20との相関はR20との相関よりも強かった。これらの結果は慢性閉塞性肺疾患患者で報告された結果と類似しており、fixed airflow obstruction患者では小さな気道が主に障害されていることが示唆された。II群の患者はFEV1/FVCが他の群よりも低い傾向を示した。

BACKGROUND: Sensitization to Staphylococcus aureus enterotoxin (SE) is a known risk factor for asthma susceptibility and severity. However, how SE sensitization is involved in asthma, particularly nonatopic asthma and/or late-onset asthma, remains uncertain. OBJECTIVE: To clarify the involvement of SE sensitization in nonatopic and/or late-onset asthma and its association with a polymorphism of the cysteinyl leukotriene receptor 1 gene (CysLTR1), which was examined because CysLT signaling is closely associated with late-onset eosinophilic asthma. METHODS: We assessed associations between sensitization to SE (A and/or B) and clinical indexes in 224 patients with asthma (mean age, 62.3 years; 171 women) from a cohort of the Kinki Hokuriku Airway Disease Conference, particularly those with nonatopic asthma (not sensitized to common aeroallergens) and/or late-onset asthma. Associations between SE sensitization and CysLTR1 polymorphism (rs2806489), a potential regulatory variant for atopic predisposition in women, were also assessed in a sex-stratified manner. RESULTS: A total of 105 patients (47%) with asthma were sensitized to SE. Among patients with nonatopic asthma (n = 67) or with late-onset asthma (n = 124), those sensitized to SE had significantly higher serum total IgE and periostin levels than those not sensitized. In nonatopic patients, a rapid decrease in forced expiratory volume in 1 second was associated with SE sensitization. In women with asthma, rs2806489 was associated with sensitization to SEB and age at asthma onset. CONCLUSION: SE sensitization contributes to TH2 inflammation in nonatopic and/or late-onset asthma. In women with asthma, the CysLTR1 variant might be associated with sensitization to SEB and age at asthma onset.

現在,本邦で発売されているLAMA/LABA製剤は,ウルティブロ,アノーロ,スピオルトの3種類である。それぞれのデバイスであるブリーズヘラー,エリプタ,レスピマットの特徴と,吸入指導時のポイントについて概説した。正確で丁寧な吸入指導は,吸入薬の効果を最大限に引き出し,アドヒアランスの向上に繋がる。視覚で捉えられるデバイスの操作だけではなく,眼に見えない口腔内の状態,特に舌の位置も重要であると考える。(著者抄録)

呼吸器疾患における吸入薬は,気管支喘息,COPDのfirst line drugとして位置づけられている.本邦にて使用可能な吸入薬,配合剤(ICS/LABA,LABA/LAMA)について,その特徴を把握し,患者の背景に合った製剤を選択する.さらに必要不可欠である吸入指導については,各種デバイスに共通したポイントやデバイスごとの問題点を整理する.吸入指導については,全国どこの施設でも基本的な指導が行えるようDVDとポスターを無料で配布している.今後もアップデートを重ね,新しい吸入指導のツールとしての展開を望む.(著者抄録)

肺アスペルギルス症に合併した同時性重複癌(肺腺癌、肝細胞癌)の1例を経験した。症例は73歳男性で肺アスペルギルス症が先行し、抗真菌薬投与により一時肺病変は改善したが、その約7ヵ月後の胸部CTで空洞壁の肥厚が増強し、右上葉縦隔側に腫瘤影が出現、気管支鏡検査で肺腺癌と判明した。血液検査でCEA 228.5ng/mlと高値を認めたため精査したところ、PET/CTと腹部造影CTで肝細胞癌と診断され、肺アスペルギルス症に右肺腺癌(T4N2M0、Stage IIIB)および肝細胞癌を合併した同時性重複癌と診断した。(著者抄録)

ポイント吸入デバイスの特徴と患者の背景を考慮して吸入薬を選択する.吸入時に,口腔内で舌を下げるように指導すると気管内到達率が上がる.動画を用いた吸入指導が有用である.繰り返し吸入指導を行うことが良好なコントロールにつながる.(著者抄録)

ACOSの概念は新しく、ACOSの予後に関連する前向きな調査報告は極めて少ない。喘息、COPDの論文からACOSと思われる病態の予後を検索したが、一定の見解が得られていないのが現状である。ACOSは、合併する気管支喘息、COPDの重症度により程度が一定ではなく、現段階において一概にACOSの予後を完結的にまとめることは困難と考える。(著者抄録)

Background: The number of elderly patients with asthma has been increasing in Japan. Treatment for these patients should be provided based on the condition of individual patients. This study was performed to clarify the relationship between inhalation procedure and sex difference in elderly patients with asthma. Methods: The inhalation procedure was examined in 155 elderly patients with asthma (male: n = 66, average age +/- standard deviation: 75.5 +/- 5.65 years old; female: n = 89, average age +/- standard deviation: 78.7 +/- 6.87 years old) during a medical examination. Results: For the three items that were common to all devices, the percentages of the 155 patients who could/could not perform the actions were examined by separate Fisher's exact tests for males and females. A statistically significant difference (P = 0.007) was observed for "breath holding", and more females than males were not able to hold their breath. Although no significant difference was seen in the "accurate number of times of inhalation", females tended to not be able to inhale accurately compared to males (P = 0.072). Conclusion: Our results suggest that elderly female patients with asthma have less understanding of inhaled steroid therapy, compared to elderly male patients. Therefore, it is particularly important to confirm that the correct inhalation procedure is used by elderly female patients with asthma.

気管支喘息、COPDにおける治療の第一選択薬は、吸入薬である。しかし、製剤ごとにデバイスが異なるため患者はもちろん医療従事者でも吸入手技が混乱することがある。それぞれの加圧式定量噴霧吸入器(pressurized metered-dose inhaler:pMDI)製剤とドライパウダー(dry powder inhaler:DPI)製剤の特徴を理解し、そのうえでデバイスを選択する必要がある。本稿では後期高齢者を含んだ高齢患者を対象として、吸入指導の現状や問題点を挙げ、吸入指導のポイントを述べる。(著者抄録)

気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)における治療の第一選択薬は、いずれも吸入薬であり、その進化にはめざましいものがある。しかし、各製剤ごとにデバイスが異なるため患者はもちろん医療従事者でも使用前準備、吸入手技が混乱することがある。pMDIとDPIの特徴を理解し、そのうえでデバイスを選択する必要がある。本稿では、おもなデバイスの吸入手技の現状と問題点をあげ、その対策について述べる。(著者抄録)

JGL2012では、治療ステップ4の治療を行っても症状が毎日出現する状態を最重症持続型喘息に属する難治性喘息と位置づけている。治療ステップ4の薬剤に加えて抗IgE抗体、経口ステロイド薬の投与を考慮する。しかし最重症持続型喘息と診断する前に、環境因子の検討、合併症の確認、現在の治療が確実に行われているかを再度確認する必要がある。本稿では、最重症持続型喘息を重症喘息とし、発展の著しいICSやICS/LABA配合剤の効果が充分に反映されるように、吸入デバイスや補助器具の特徴を概説し、患者背景を考慮した薬剤選択と吸入指導について述べる。(著者抄録)

気管支喘息の主な修飾因子には、アスピリン喘息(AIA)、運動誘発喘息(EIA)、高齢者喘息などがある。AIAは好酸球性鼻茸副鼻腔炎の合併と、シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)阻害薬により強い上下気道症状が惹起されることを特徴とし、COX-1阻害薬誤用防止対策が必要である。また近年アスリートのEIAの病態解明が進んでおり、運動前のβ2刺激薬吸入が有用であるが、コントロール不良の場合は長期管理薬の追加が推奨される。薬剤投与の際は、ドーピング禁止薬剤への配慮が必要である。高齢者喘息は過小診断・評価や治療不足となりやすい。個々の修飾因子を考慮した治療が重要である。(著者抄録)

吸入薬は、気管支喘息、COPDのFirst line drugとして必要不可欠であり、近年益々様々なタイプのICS製剤が増え続けている。喘息予防・管理ガイドライン2012においても、新たに吸入方法の重要性が明記された。特に高齢者においては、非高齢者に比べ吸入薬の誤操作が目立つ。治療をステップアップする前に、再度吸入指導を行うことが良好なコントロールに繋がる。この度ICS/LABA新規配合剤のpMDI製剤が登場し、その役割が期待されるため、個々の患者に適した薬剤の選択を目的に、高齢者喘息治療ナビゲーションを作成した。更にDVDを導入した吸入指導は、一定レベルの説明が可能となり、繰り返し学習でき吸入指導の新しい展開と考える。(著者抄録)

喘息治療薬剤の進歩とともに吸入デバイスが多様化しており、高齢者においては正確に吸入されておらず効果が得られていない場合もある。また、非専門医にとっても吸入ステロイド薬(ICS)のデバイスを選択する場合、何を目安に選択していけばいいか迷うことも多い。個々の患者の背景に合ったデバイスを選択できるように、選択の目安をわかりやすくすることも呼吸器科医の任務であると考え、高齢者患者における吸入薬の適応を吸入流速と手指筋力の両面から示すデバイス選択のナビゲーションをフローチャートに作成した。また、高齢者の喘息治療効果をあげるには、吸入用量を増量したり、ステップアップの治療を行う前に吸入手技の確認を行うことで治療効果に差が生じることが確認された。(著者抄録)

喘息治療のfirst line drugは、吸入ステロイド薬である。治療薬剤の進歩とともに選択肢が拡がる一方、吸入デバイスも多様化しており、特に高齢者においては正確に吸入されておらず、期待される効果が得られていない場合もある。吸入療法という自宅での特殊な治療方法を要する呼吸器領域においては、普段われわれが気づかないところにさまざまな問題点が存在する。個々の背景を考慮して、視力、聴力、記憶力、筋力の低下などのハンディキャップにも対応する必要がある。また、非専門医にとっても吸入ステロイド薬のデバイスを選択する場合、何を目安に選択していけばいいか迷うことも多いと思われる。個々の患者の背景に合ったデバイスを選択できるように、その選択の目安をわかりやすくすることもわれわれ呼吸器科医の任務であると考える。本講演では、喘息治療モチベーション継続のコツについて述べた。(著者抄録)