秋山 泰一, 石川 隆志, 山内 章弘, 高須賀 広久, 海江 田章, 小野 正人, 三澤 健治, 日比谷 信, 井平 勝, 服部 良信
体外循環技術 23(2) 6-10 1997年
腎不全を合併した狭心症,および腹部大動脈瘤の1症例に対し,体外循環下に血液透析を併用し,冠状動脈バイパス術と腹部動脈瘤人工血管置換術を同時に施行した。症例は72歳,男性。慢性腎不全の診断で他院に入院中,腹部エコーとCTで腹部大動脈瘤を指摘された。その後胸部絞扼感が出現し,緊急冠状動脈造影を施行した。左主幹部の有意な狭窄を認めたため当院に転院し,緊急手術を施行した。腎不全に対する血液透析回路を体外循環に組み込み,冠状動脈バイパスニ枝を吻合終了後,補助循環中に腹部大動脈Y字人工血管置換術を施行した。補助循環中に腹部大動脈人工血管置換術を行うことで,術中の血行動態の管理や,血液の回収,返血等が容易となり,より安全に手術を行うことができた。また,体外循環中に血液透析を併用することにより,血中K+濃度や酸塩基平衡の管理および除水が容易であり,術後の血行動態の不安定な時期での血液透析を回避することができた。