廣瀬和之, 大泊 巌
Journal of the Surface Science Society of Japan (JSSSJ) 10(10) 850-855 1989年
金属/半導体界面の典型的な電気特性である, ショットキー障壁に関する研究の現状を, SiとGaAsについて簡単に紹介する。理想的なシリサイド/Siショットキー障壁においては, ショットキー障壁高さ (SBH) がシリサイドバルクの性質によって変化しており, 弱いピニング現象しか起きていない。エピタキシャルNiSi2/Siショットキー障壁に対する理解は, 大型計算機物理の進歩と共に進んでいる。一方, 金属/GaAsショットキー障壁に対しては, 金属誘起準位と界面欠陥準位の両界面準位がショットキー障壁決定によるというモデルが支持されている。しかし, 元来のショットキー理論が成立するという結果も報告されており, その機構は未だに解明されていない。GaAsの上に多結晶金属膜が形成され, 化学反応や相互拡散が起こっている界面に, 界面超構造の存在と共に界面超構造に依存したSBHの違いが見いだされる。さらに, 分子線エピタキシャル成長法により, Al/GaAsショットキー界面に, 希土類金属を含む中間層あるいはドーピング層を挿入することによって, SBHの制御が可能であることが見いだされる。超LSIのコンタクト特性の制御においては, 障壁形成前の半導体表面の清浄化も重要な課題である。従来清浄表面とされてきたSi (111) -7×7超構造は, 吸着原子のバックボンドに酸素原子を含む構造である疑いが生じている。