研究者業績

國中 均

クニナカ ヒトシ  (Hitoshi Kuninaka)

基本情報

所属
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 理事・所長
学位
工学博士(1988年3月 東京大学)
工学修士(1985年3月 東京大学)

ORCID ID
 https://orcid.org/0000-0002-6871-3133
J-GLOBAL ID
200901080116851867
researchmap会員ID
1000144511

外部リンク

 2010年6月13日、「はやぶさ」小惑星探査機が宇宙の遥か彼方から豪州ウーメラ砂漠に目掛けて地球大気に超高速で突入してきました。探査機は木っ端微塵に分解し蒸発してしまいましたが、カプセルだけが高温環境を耐え抜き落下傘を開き、着陸に成功しました。この事業を実現させるため、イオンエンジンの研究開発、探査機設計・製造・試験、打ち上げ、宇宙運用、豪州政府と交渉、世界の科学者の説得と、多岐に渡る課題を一つ一つ解決した上で、私が回収班長として組織した50名に及ぶJAXA職員を300kmに渡る広域に散開させ、カプセル収容が成されました。
 カプセルの回収に成功し、安堵と疲労で意識が遠のく中、ふと過去の記憶が蘇りました。高校生の頃、武蔵高校の太陽観測部で20名ほどの中学生を引率して、夏にはペルセウス座流星群の観測のため福島県の安達太良高原と熱塩温泉と二手に分かれて合宿したこと、年末にはこぐま座やしぶんぎ座流星群観測のため高尾山頂上と校舎屋上から2点観測したことが思い出されました。昔は20名でクラブ活動の日本国内だったものが、50名で国家事業としての海外遠征にまでなったのだとその時初めて気が付きました。
 はやぶさの成果に基づいて、私がプロジェクトマネージャとして完成させた「はやぶさ2」は、ほぼ完璧に宇宙ミッションをこなし、2020年12月6日、再び豪州ウーメラ砂漠にカプセルを届けました。コロナ禍という宇宙科学技術とは異次元の困難を突破し、70名に及ぶJAXA職員を再び豪州に送り込み、カプセル回収に成功しました。それだけでなく、2029年には火星の月フォボスからサンプル回収する3度目の事業:MMX計画を開発中であり、約10年間隔で定期的に宇宙物質を持ち帰り地球で分析するmanifestoを推進しています。水星から土星に至る各天体に宇宙研のDNAを込めた探査機を配置した「深宇宙船団 (Deep Space Fleet)」がもうじきに完成します。これらtacticsを総動員して、太陽系46億年の歴史を解き明かし、生命の起源に迫ります。

 

 惑星探査のみならず、宇宙物理・天文分野にても成果を積み上げてきました。これまでの個々個別の活動から、ガンマ線・X線・紫外線・可視光・赤外線・マイクロ波・電波といった「波長統合した宇宙観測ネットワーク化」という課題を掲げて、宇宙138億年の進化の究明に挑戦しています。 

 


学歴

 6

主要な論文

 163
  • 國中 均
    表面と真空 63(4) 183-188 2020年4月10日  招待有り筆頭著者
  • 森下, 神田, 細田, 最上, 峯村, 野村, 國中
    静電気学会誌 44(3) 128-134 2020年3月  査読有り最終著者
  • Kazutaka Nishiyama, Satoshi Hosoda, Ryudo Tsukizaki and Hitoshi Kuninaka
    Acta Astronautica 166 69-77 2020年1月  査読有り最終著者
  • 國中
    応用物理 85(7) 553-559 2016年  招待有り
    宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所・電気推進研究室が、米欧ロとは技術的に一線を画して研究開発したマイクロ波放電式イオンエンジンは、「はやぶさ」小惑星探査機の主推進として採用され、地球〜小惑星間宇宙往復航海を世界に先駆けて実現した。高効率・省電力でプラズマを生成しながら1台当たり2年間にも及ぶ耐久性を宇宙で実証した。宇宙活動と同時並行で行われた地上におけるさらなる研究開発は、光ファイバーを用いた新たな探針法によりイオン源内部現象を解明し、性能向上をもたらした。改良されたイオンエンジンは、「はやぶさ2」小惑星探査機において、新たな小惑星に向けてその能力を今まさに発揮中である。本稿では、従前の電極を用いる直流放電式システムと比較しながら、電子サイクロトロン共鳴型イオン源の高い性能と耐久性を解説する。
  • 國中
    日本惑星科学会誌 22(2) 2013年  招待有り
    宇宙工学は、宇宙への往来の実現を目指し、技術を切磋琢磨してきた。その成果の端的な例は、「はやぶさ」にて実現された地球〜小惑星間往復航行(2003年〜2010年)である。それにより、科学や技術分野を越えて、より大きな世界観を得ることができた。次の新しい知見を得るために、科学的な意義はもちろんのこと、「宇宙を自在に往来する独自能力の維持発展」と「人類の活動領域の宇宙への拡大」という宇宙工学・宇宙探査に跨る目標を担い、「はやぶさ2」小惑星探査ミッションが開発中である。
  • 川口, 國中
    日本航空宇宙学会誌 59(694) 2011年  招待有り
  • Hitoshi Kuninaka, Kazutaka Nishiyama, Ikko Funaki, Tetsuya Yamada, Yukio Shimizu, Jun'ichiro Kawaguchi
    JOURNAL OF PROPULSION AND POWER 23(3) 544-551 2007年5月  査読有り
  • 國中
    プラズマ・核融合学会誌 82(5) 300-305 2006年5月  招待有り筆頭著者
    プラズマ生成に直流放電を利用する従来式電気ロケットは、放電電極損耗という劣化要素を含み、長寿命・高信頼を必須とする宇宙機械において重大な問題を抱えていた。これをマイクロ波放電による無電極化にて根本的に解決し、日本独自のシステムとしてマイクロ波放電式イオンエンジンが開発された。「はやぶさ」小惑星探査機は、2003年5月から2年余を掛けて、太陽距離0.86天文単位から1.7天文単位に至る広範な宇宙を走破して、目的天体「いとかわ」とのランデブーに成功した。この間、主推進装置である4台のマイクロ波放電式イオンエンジンは、22kgの推進剤キセノンを消費して、総増速量1,400m/s、延べ作動時間25,800時間という世界一級の成果を挙げた。慣性(弾道)飛行していたこれまでの「人工惑星」「人工衛星」とは異なり、高性能推進機関を搭載する宇宙機は、動力航行する能力を持ち、「宇宙船」に分類されるべき新しい技術である。
  • 國中, 堀内, 西山, 船木, 清水, 山田
    日本航空宇宙学会誌 53(618) 203-210 2005年7月  招待有り
  • H Kuninaka, P Molina-Morales
    ACTA ASTRONAUTICA 55(1) 27-38 2004年7月  査読有り筆頭著者
  • 國中, 西山, 清水, 都木, 川口, 上杉
    日本航空宇宙学会論文集 52(602) 129-134 2004年  査読有り
    2003年5月9日13時29分に鹿児島宇宙空間観測所からM−V5号機により打ち上げられた「MUSES−C」は正確に深宇宙軌道に投入され、「はやぶさ」と命名された。着想から15年の歳月をかけて小惑星探査機1)の主推進としてマイクロ波放電式イオンエンジン「μ10」は宇宙生まれ(Space-borne)となった。その後、数週間の真空暴露を経て、1ヶ月に及ぶ試運転を実施し、7月には巡航運転を開始して、1日当たり数m/sの定常加速がなされている。規模の小さい科学衛星には電力や重量の観点から電気推進の搭載はおよそ不可能と思われていたが、イオンエンジンだけでなく衛星およびロケット全般技術の革新、深宇宙探査へのニーズに支えられてようやく実現した。本論文で述べるマイクロ波放電式イオンエンジン「μ10」は他のイオンエンジンとは異なる独自の着想のもと、宇宙科学研究所電気推進工学部門が研究開発を進めてきたものである。打ち上げ直前地上作業から初期運用に至る経緯と飛翔の報告を行う。
  • H Kuninaka, S Satori
    JOURNAL OF PROPULSION AND POWER 14(6) 1022-1026 1998年11月  査読有り
  • 國中
    日本航空宇宙学会誌 46(530) 174-180 1998年3月  招待有り

MISC

 66

書籍等出版物

 5

講演・口頭発表等

 190

主要な担当経験のある科目(授業)

 5
  • 2005年4月 - 2018年3月
    電気推進工学  (東京大学大学院宇宙航空学専攻)

主要な共同研究・競争的資金等の研究課題

 17

主要なメディア報道

 9