森 治, 遠藤 達也, 白澤 洋次, 三桝 裕也, 川口 淳一郎, 津田 雄一, 澤田 弘崇, 船瀬 龍, 山本 高行, 佐伯 孝尚, 米倉 克英, 星野 宏和, 南野 浩之
日本航空宇宙学会誌 60(8) 283-289 2012年 査読有り
「ソーラーセイル」は,太陽光の圧力をセイルに受けて宇宙空間を航行する宇宙帆船であり,燃料なしで推進力を得ることができる.一方,「ソーラー電力セイル」は,薄膜太陽電池をセイルの一部に貼り付けて,発電も同時に行う.ソーラー電力セイルはソーラーセイルにより燃料を節約できるだけでなく,大面積の薄膜太陽電池を利用して,太陽から遠く離れた場所でも必要電力を確保できる.この電力を用いてイオンエンジンを駆動すれば,光子加速と合わせたハイブリッド推進が可能となる.JAXAではこれを踏まえてソーラー電力セイル探査機による木星圏探査計画を提案している.この計画のリスク軽減のフロントローディングとして開発されたのが,小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」であり,世界で初めてソーラー電力セイルを実証することに成功した.本稿では,IKAROSのミッションおよびシステムの概要を説明し,開発・運用について紹介する.