久保田 孝, 斉藤 宏, 佐藤 忠直, 川口 淳一郎, 中谷 一郎, 江西 達也, 後藤 晋一, 斉藤 一晶, 浅野 秀夫, 秋岡 大作, 那須 譲次, 林 房男
宇宙科学研究所報告. 特集 47 155-210 2003年3月
M-V型ロケットには,慣性航法誘導装置(ING: Inertial Navigation Guidance)を第3段計器部に搭載し、第1段から第3段までの3軸姿勢制御を行う.M-3SII型ロケットまでの姿勢基準装置は,レートジャイロ(FRIG: Floated Rate Integration Gyro)という機械式ジャイロを1軸のスピンフリーテーブル(SFAP)上に配置していたが,M-V型ロケットにおいては,ファイバオプティックジャイロ(FOG: Fiber Optic Gyro)を機軸に固定するストラップダウン方式を用いて,計算機(CPU)内部で座標変換を行う方式へと大幅に変更をしている.この新しい姿勢基準装置(IMU: Inertial Measurement Unit)は,搭載加速度を用いて,機上で航法誘導演算を行う慣性航法誘導装置INGを構成しているのも,M-V型機の特徴である.FOGは,機械的な可動部分を全くもたないため,信頼性が高く,次世代のジャイロとして諸外国が開発にしのぎを削っているものである.しかしながらその反面,その実用化,特に慣性航法誘導装置に採用されるレベルのドリフト変動を実現するのは非常に困難である.M-V型ロケットで採用しているFOGは,さまざまな課題を克服して完成したものであり,画期的な装置となっている.IMU及びCPUは,第3段の計器部に配置され,この部位での角速度情報は,姿勢変動分のインクリメントとして計測される.一方,第1段の姿勢制御においては,第1段の可動ノズルの応答を加味すると,第3段位置での角速度情報を用いるよりも,第1段後部筒部位での角速度情報を用いた方が、制御系の安定余裕を確保しやすい.そのため,第1後部筒部位には,レートジャイロが搭載されている.第2段ノズル部には,第1段飛翔中の横加速度を測定し,荷重を軽減する論理を可能とすべく,計測用として加速度計が搭載されている.また,各段には通信制御部(I/O)が搭載され,各段間のデータのやりとりを行う.