井筒 直樹, 稲富 裕光, 並木 道義, 栗林 一彦, 矢島 信之
宇宙科学研究所報告 特集 39(39) 23-44 1999年3月
現在, 微小重力実験は主として, シャトル, 観測ロケット, 航空機, 地上落下塔により行われているが, 実験の頻度, 微小重力環境の質と持続時間, 実験費用等を検討すると, 落下塔や航空機搭載の場合よりも持続時間が長くて, 比較的簡便な方法が求められている。大気球を用いた大気中の落下カプセルによる微小重力実験は, 1980年代に3回, 三陸大気球観測所において行われており, 0.01g以下の微小重力環境が約18秒間得られている。この持続時間を30秒以上に延ばすことができれば, 簡便で有用な微小重力実験手段になると期待される。ここでは, 三陸大気球観測所において大気球を用いた微小重力実験を行う場合に, どの程度の微小重力環境が得られるかを検討した。微小重力実験用落下カプセルのモデルを用いた風洞試験を行い, その結果と実際の大気環境条件を使用して, 落下カプセルの降下運動を数値シミュレーションした。そして, 大気球を用いた微小重力実験を行う場合に実現可能な微小重力の質と持続時間, また, そのために要求される搭載機器の制限等を求めた。直径0.4m, 40kgの搭載装置の場合には約30秒の0.01g, 直径0.125m, 10kg程度の装置では35∿40秒の0.01g以下の微小重力環境を実現することが可能である。資料番号: SA0167141000