本間 直彦, 山田 和彦, 秋田 大輔, 牧野 仁, 安部 大佑, 永田 靖典, 木村 祐介, 小山 将史, 林 光一, 安部 隆士, 鈴木 宏二郎, MAAC研究開発グループ
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 10(10-013) 51-66 2011年3月
柔軟構造エアロシェルを有する大気突入機は,弾道係数を小さくできるため,大気突入時の空力加熱を大幅に低減できるものとして期待されている.特に我々のグループでは,インフレータブルトーラスで支持されたフレア型薄膜柔軟エアロシェルに注目し研究を進めている.軽量かつ大型な構造体を確実に展開し,十分な強度を持たせるためには,ガス圧で構造を維持するインフレータブル構造が有効であると考えられている.しかし,インフレータブル構造を有する飛翔体について,特に雰囲気圧が大きく変化するような環境に対して詳しく理解されているとは言い難い.そこで,大気球を用いてインフレータブル柔軟エアロシェルを有する大気突入機の展開および飛翔試験を実施することにより,そのシステムを構築するための基礎的な技術や知見の獲得を目指すこととした.本稿では,インフレータブル構造を有する飛翔体の展開やその飛翔を実証するために行った気球実験について報告する.実験機は展開後の直径が1.264 m,総重量3.375 kg,弾道係数2.69 kg/m^2であり, エアロシェルはガス圧膨張可能なインフレータブルトーラスとナイロン製の薄膜フレアで構成される.大気球により高度25 kmまで上昇させ,エアロシェルの展開を行ったのち,気球から実験機を切り離し,約30分間の飛行を行った.全てのシークエンスは正常に実施され,以下の成果を得ることができた.1)地上からのコマンドに対応して,折り畳まれたエアロシェルを正常に展開することに成功した.2)フライトデータより,供試体の飛行特性に関する抵抗係数等のデータを取得した.3)インフレータブルエアロシェルの構造強度に関して,事前の風洞試験と比較できる有用なデータを取得した.