竹田茂文, 加瀬義夫, 新井一郎, 石毛敦, 杉本晃, 曽根秀子, 末川守, 小松靖弘, 細谷英吉
応用薬理 34(4) 357-373 1987年10月
続命湯の熱水抽出エキス(ツムラTJ-8007)の一般薬理作用について検討した.中枢神経系における検討として,1及び3 g/kgで自発運動を亢進し,0.1〜3 g/kgで体温を正常,発熱時の別なく上昇させたが,その他の項目に1〜3 g/kgでも著変を与えなかった.呼吸・循環器系における検討で,0.1或いは1 g/kgで血圧を増加し,心機能を亢進した.これらの反応は閉胸下より開胸下で顕著であり,TJ-8007の循環器系への作用は動物の状態によりかなり異なることが示唆された.一方,呼吸への作用はかなり弱いものであった.消化器系における検討では,3 g/kgで胃液分泌の抑制を,1及び3 g/kgで胆汁分泌の増加を,1及び3 g/kgで生体位胃運動の抑制をそれぞれ示した.交感神経節伝達に対しては,0.1及び1 g/kgで著変を与えなかった.摘出平滑筋を用いた実験では,10-5 g/mlで輸精管のnorepinephrineによる収縮反応を弱いながら増強したが,回腸の自動運動および各種spasmogenによる収縮反応にはほとんど影響を与えなかった.尿排泄に及ぼす影響を生理食塩液負荷下で検討したところ,1および3 g/kgで尿量を用量依存的に減少した.この尿量減少はTJ-8007の薬理作用というより,むしろ高粘稠なTJ-8007溶液が負荷した水分を保持した結果と推測される.血液に及ぼす影響をex vivoで検討したが,0.1〜2 g/kgで凝固系,線溶系及び血液粘度のいずれにも著変を与えなかった.さらに炎症反応に及ぼす作用について検討したが,0.1〜1 g/kgで血管透過性の亢進及び足蹠浮腫の形成に著変を与えなかった.上述のごとく,TJ-8007は比較的低用量から体温上昇,血圧増加,心機能亢進,腎血流増加などを,高用量では自発運動亢進,胃機能低下などを,またin vitroで輸精管のnorepinephrine収縮増強をそれぞれ呈することから,交感神経系に対して興奮的に働くものと考えられる.しかし,これらの作用は特に強いものではなく,その他の特記すべき作用もみられず,TJ-8007は比較的安全に使用できる薬剤であると推測される