淺野 敬子, 中島 聡美, 成澤 知美, 中澤 直子, 金 吉晴, 小西 聖子
女性心身医学 21(3) 325-335 2017年3月 査読有り
【背景・目的】性暴力被害者が被害後の急性期に被害による心身への影響や司法手続きおよび支援に関する情報を得ることは、被害後のストレスを軽減し、被害者を適切な治療や支援に繋げやすくすると考えられる。しかし、被害後急性期の被害者に総合的な支援情報を提供する媒体は少なく、その有用性について評価されたものはない。そこで、急性期性暴力被害者のための情報提供用ハンドブック(以下、冊子)を作成し、性暴力被害者の支援者または治療者(以下、支援・治療者)を対象に本冊子の有用性について評価を行った。【方法】先行研究や性暴力被害者への聞き取りを基に冊子原案を作成し、多職種の専門家、被害当事者(29名)に意見を求めて原案を修正し冊子を作成した。本冊子の有用性を評価するため、産婦人科医療機関や支援機関に所属する性暴力被害者の支援・治療者(186名)を対象に自記式アンケート調査を行った。本調査では、調査協力者へ先に本冊子を配布し冊子を使用してもらい、3ヵ月後に本冊子の有用性についての自記式調査票を配布し回答を得た。本研究の実施にあたり、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会の承認を得た。【結果】対象者のうち104名(回収率55.9%)から回答を得た。回答者は、女性が95.2%であり、平均年齢は54.1±13.1歳であった。調査期間に被害者に本冊子を使用した者は18.3%であった。冊子全体の評価では、支援者および被害者・家族にとって「役に立った」という回答は80%以上あり、「理解しやすかった」という回答は70%以上であった。調査期間中に支援・治療を経験した者では、そうでない者と比べ「治療・支援が円滑に行えた」という評価が高い一方、「時間の負担」が増したとする意見が多かった。【考察】本冊子は、支援者の視点から被害者に情報提供をする上で有用であるという評価を得た。今後は性暴力被害者から評価を得て本冊子の内容を検討することが課題である。(著者抄録)