牧野 宏章, 原田 研一, 島 尚喜, 奥山 春香, 江角 朋之, 久保 美和, 日置 英彰, 福山 愛保
天然有機化合物討論会講演要旨集 55 PosterP-35 2013年
<p>1.序論</p><p> 大環状ビスビベンジル類は2種類のビベンジルがエーテル結合もしくはビアリール結合で連結し大員環を形成した天然物で,その結合様式の違いによりAからCの3種類のサブタイプに分類される (Fig. 1).この特異な構造に加え,ビスビベンジル類は様々な生物活性を有することから合成ターゲットとして取り上げられ,合成研究が盛んに行われてきた.その合成法の多くはベンジル位間での環化反応が主流となっているのに対し, 我々はPd触媒を活用したビアリール結合形成反応を大員環の構築に適用する独自の戦略でビスビベンジル類の合成を行ってきた.<sup>1</sup>今回,これまでの合成戦略を応用してタイプBに分類される一連の化合物riccardin C (1),asterelin A (2) 及びcavicularin (3) の合成研究を検討することにした.Riccardin C<sup>2</sup>はBタイプのビスビベンジル類を代表する化合物で, 選択的LXRaアゴニストとして働くことから動脈硬化の予防薬として期待されている.また,asterelin A<sup>3</sup>およびcavicularin<sup>4</sup>は,1の分子内酸化カップリングにより生合成されていると考えられ,2は10位と13'位の水酸基間で分子内エーテル結合したジベンゾフラン構造を,一方,3は3'位と10'位間でビアリール結合したジヒドロフェナンスレン構造を有する新奇な構造からなる (Fig. 2).3は高度に歪みのかかった環状構造を有することから軸不斉を生じ [a]<sup>21</sup><sub>D</sub> +168 (c = 0.25, MeOH) の旋光性を示す光学活性体である. 本研究では, これら一連の化合物の系統的合成法を確立する目的で1から3の合成研究をおこなった.</p><p>2. 逆合成解析</p><p> 1, 2 および3 の逆合成解析をScheme 1に示す.1-3の大員環構築には環化前駆体6にPd触媒分子内鈴木宮浦反応を適用することにした.1の誘導体4を共通中間体とし,2 は4の分子内酸化カップリング反応により構築できると考えた. また, 3のジヒドロフェナンスレン構造は, 共通中間体4をヨウ素化した5 に対してPd触媒Ar-Arカップリング反応を行い合成することにした. また, 大環状環化前駆体6は各ユニットをHorner-Wadsworth-Emmons (HWE) 反応で連結し調製する計画である. </p><p>3. Riccardin C (1) の合成<sup>5</sup></p><p> 最初にriccardin C (1) の合成に着手した (Scheme 2).化合物11と12のUlmannカップリングにより得られた8をHWE反応で9と連結し,エステル13を得た.続いてエステルのLiAlH<sub>4</sub>還元後, ブロモ化とArbuzov反応をおこないホスフォネート体14へ誘導した.次に14をアルデヒド15とHWE反応により連結後,Et<sub>3</sub>SiH/TFAで処理するとスチルベンの還元<sup>6</sup>と脱MOM化が同時に進行し16が得られた. 生じた水酸基をトリフラート化後,位置選択的ホウ素化<sup>7</sup>を行い環化前駆体18へ変換した.</p><p> 続いて18の分子内鈴木宮浦カップリングによる大員環構築を試みた (Table 1). まず, 最初にPd(PPh<sub>3</sub>)<sub>4</sub>/K<sub>3</sub>CO<sub>3</sub>/DMFの条件下<sup>8</sup>反応を行ったところ, 目的物である19は9%しか得られなかった (Entry 1). そこで触媒としてPd<sub>2</sub>(dba)<sub>3</sub>, 配位子としてSPhosを使用したところ, </p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>