Manami Kodaka

本研究では、これまで心理学的剖検研究では同定が難しかった女性の自殺既遂事例における、精神保健的・社会的背景と特徴、また予防介入のポイントについて、試行的検討を行った。そこから、女性の自殺に関して、いくつかの臨床類型が整理されるとともに、リプロダクティブヘルスやジェンダー役割と関わる女性特有の就労状況に関連した自殺リスクや介入ポイントが明らかとなった。

本研究では、日本の女性の自殺死亡率が高いことをふまえ、女性の自殺について明らかにする上で、従来の心理学的剖検の基礎調査の研究デザインおよび調査票の問題点を検討した。これにより、追加・修正の必要な調査項目、調査対象の見直しと調査デザインの改変のポイントについて整理された。

わが国における持続的な自殺の心理学的剖検の調査体制確立のため、従来の精神保健福祉センターとの連携体制に加え、自殺予防総合対策センターと東京都観察医務院による心理学的剖検の実施体制を構築した。

心理学的剖検の手法を用いた症例対照研究を実施し、遺族から得られた自殺死亡事例の情報と一般住民生存者の情報を比較して、自殺の要因と介入のポイントについて検討した。そのなかで、若年層と若年層以外および男女別にデータの分析を行い、特に若年層および女性の自殺既遂者の精神医学的・心理社会的特徴に着目した。本研究から、特に若年層では、いじめなどの学校問題や幼少期の親との死別・離別、女性では、幼少期の親との死別・離別に加え家族内でのアルコールの問題が、特に自殺のリスクとなる可能性が示唆された。

遺族支援に資する介入法を開発することを目的として、遺族支援を目的として作成された冊子「大切な人を自死で亡くされた方へ」を評価した結果、その有用性が確認された。また、今後、遺族ケアとして、一元化された相談窓口の設置が求められていることが示唆された。

わが国における持続的な自殺の心理学的剖検の調査体制確立のため、従来の精神保健福祉センターとの連携体制に加え、自殺予防総合対策センターと東京都監察医務院による心理学的剖検の実施体制を構築した。

心理学的剖検調査で収集された自殺既遂事例のデータを用いて、女性の自殺が、背景にある心理学的・精神医学的特徴に関して、男性とはどのように違うのかを明らかにすることを目的とした。その結果、摂食障害のある女性で、特に重複する精神疾患と自殺未遂歴のある場合には、自殺リスクが高くなる危険性があることが分かった。また、女性の自殺予防には、本人への支援はもちろんのこと、家族への心理教育や精神的サポートを含めた支援も重要であることが示唆された。

わが国における持続的な自殺の心理学的剖検の調査体制確立のため、従来の精神保健福祉センターとの連携体制に加え、自殺予防総合対策センターと東京都観察医務院による心理学的剖検の実施体制を構築した。

本研究では、先行の心理学的剖検による自殺の症例対照研究をレビューし、本研究班における心理学的剖検研究の資料とすることとした。その結果、自殺予防総合対策センターが実施する心理学的剖検研究は、国際的にも十分比肩しうる学術性かとなる可能性があることが分かった。

自殺の心理学的剖検による症例対照研究を実施し、睡眠障害と自殺との関連および、自殺予防における睡眠障害のスクリーニングの有用性について検討することを目的とした。本研究からは、睡眠障害は精神障害とは独立して、自殺の重要なリスク因子であることが明らかになった。睡眠障害の有病率は精神障害に比べ高く、睡眠障害のスクリーニングと介入は、わが国の自殺予防において有用であることが示唆された。

心理学的剖検の手法を用いて収集した自殺既遂事例のうち、過去に自殺企図歴がない男性自殺既遂事例の情報と、性別・年齢階級・居住地域を一致させた生存対照群の情報とを症例対照研究のデザインで比較し、過去に自殺企図歴のない成人男性の自殺のリスク要因について検討した。その結果、過去に自殺企図歴のない男性の自殺既遂を防ぐためには、精神障害への保健医療的介入に加えて、返済困難な借金に対する社会的支援の重要性が示唆された。

精神科受診歴のある男性の中高年うつ病性障害患者における心理社会的な自殺のリスク要因について検討をおこなった。本研究の結果、休職や自立支援医療の利用といった環境調整の手続きを丁寧に行うプロセス自体が、恥やプライドを含む男性特有の防衛的構えを和らげ、本人の治療への動機付けを高め、結果的に自殺予防につながる可能性が推測された。