伊藤貴慶, 山本浩之, 中村太戯留
情報教育シンポジウム2026論文集, 364-367 2026年8月
本研究では,金融教育や人材育成において重要となる「不確実性下での判断力」を客観的に可視化・評価し,自己理解を支援する学習支援ツールを提案する.従来の教育評価は知識や論理的思考力に偏る傾向があり,ストレス下での意思決定特性を十分に反映できていない.そこで,認知心理学のプロスペクト理論や二重過程モデルを基盤とし,ストレス条件下でのリスク選択タスクを通じた行動データを収集・分析するWebアプリケーションを開発した.本ツールは,ユーザーの反応時間,判断安定性,リスク傾向変化量を可視化し,BRS-J(日本語版Brief Resilience Scale)スコアを含む形で個人の特性をフィードバックする機能を持つ.これにより,学習者は自身の意思決定特性の変動を自覚し,状況変化に対する判断傾向を振り返ることが可能となる.プロトタイプを大学生12名に試用してもらった予備調査では,分析内容の詳細さや結果の可視化の分かりやすさ,理論に基づく設計に対して肯定的な評価が得られた.これらの結果から,本システムは意思決定特性の可視化を通じて自己理解を促す有用性を有する可能性が示唆された.