定延久美子, 小林政司
日本家政学会大会研究発表要旨集 2007年5月10日
目的紙は書写材としての用途が一般的であるが,エコロジカルな素材として様々なシーンで利用されている.日本では、和紙の性能の高さから,紙衣という紙の衣服が古くから着用されてきた.近年では,環境に配慮された素材としてだけではなく,独特のテクスチャーを持つファッション材料としても注目されている.これまでにも,紙を材料とした服飾造形作品は発表されてきたが,その多くは布地と変わらない構成方法によって作られたものが多く,紙を材料とした衣服の構成方法については,まだ十分な検討はなされていないと思われる.本研究では,和紙の特徴を生かしたデザインを表現するためのパターンや縫製の手段など,構成方法についての考察と実際の作品制作を目的とする.<BR>方法本研究と作品制作には,古くから衣服材料として用いられてきた紙衣和紙を材料とする.紙衣和紙の衣服材料としての特徴を明らかにするために「厚み」「目付け量」「剛軟度」といった物性試験を行う.さらに,これまで作成された紙の服飾造形作品における構成方法を調査する.これらの結果から,紙に適した構成方法を考察した後,作品を制作する.<BR>目的紙衣和紙は,楮で漉いた和紙に蒟蒻糊を塗布して揉み込んで制作した.この紙衣和紙の物性試験を行った結果,布地に比べてハリが強く,厚みはあるが軽いと判断できた.この結果から,一般的な衣服パターンではなく,方形のみを組み合わせたパターンで,ハリを生かしたツーピースを制作した.縫製では,素材の硬さや厚みから,ミシンでの縫合は不向きであると判断し,方形の和紙を貼り合わせて衣服に組み立て,部分的に通したリボンで着脱できるように制作した.