三善 陽子

小児がんの特徴はその種類と治療の多様性である。近年、治療予後の改善に伴い、小児がん経験者(CCS)が増加している。原病による侵襲や治療に起因する直接的または間接的な障害である晩期合併症(晩期障害)には内分泌学的異常が多く、とりわけ性腺機能異常と妊孕性低下は深刻な問題である。小児期に治療を受けた患者では思春期にかけて性腺機能異常が表面化する可能性があり、成人してから妊孕性低下に直面する。適切な内分泌学的評価とホルモン治療がまず必要であるが、がんの治療開始前の妊孕性温存療法を小児においても今後積極的に考えていくべきである。この問題への取組みには小児腫瘍医、小児内分泌医、産婦人科医、泌尿器科医、生殖医療医、精神神経科医、看護師、臨床心理士などからなる"がん・生殖医療"のためのネットワーク構築が必要である。(著者抄録)

30歳までに肝細胞がん(HCC)を発症した小児期B型肝炎ウイルス感染者について検討した。小児HBV感染症例は546例で、感染経路は母子感染379例、水平感染154例、輸血13例であった。インターフェロン(IFN)治療は110例に行われた。30歳までにHCCを発症した例は11例あった。HCC診断時に定期受診していたのは5例で、他6例は症状発現のため受診しHCCと診断され1年以内に死亡した。HBe抗原/抗体セロコンバージョンを10例に認めた。9例が病理診断され、5例が肝硬変を合併した。HCC発症例の肝硬変の合併は5例であった。1年及び3年生存率はともに36%であった。