藤道宗人, 松下戦具, 森川和則
日本認知心理学会第14回大会発表論文集 2016 49-49 2016年6月
静止画であるにもかかわらず動いて見える錯視が生じる知覚メカニズムについて,眼球運動が錯視量を増加させる要因であることは古くから指摘されていた。ところが,錯視運動と平行の方向に眼球運動を行うと,逆に錯視量が抑制されるというケースが近年報告された(Matsushita et al., 2013)。しかしながら,この錯視量抑制現象は着色されたグラデーションパッチを刺激として用いた実験でしか報告されていない。そこで本研究では色やグラデーションが錯視量抑制現象にとって必須であるかどうかを検討した。そのためにグレースケール化したグラデーションパッチ(実験1)および静止画が動いて見える錯視でありながらグラデーションを含まない矢印ドリフト錯視(実験2)を用いつつ,先行研究と同じパラダイムで実験を行った。錯視運動量はマグニチュード推定法により取得した。その結果,錯視量抑制現象にとって刺激の色やグラデーションが必須ではないことが示された。