松下戦具, 野村真吾
日本認知心理学会第12回大会発表論文集 2014 52-52 2014年6月
Keil (1987, 1995) は,楽器間の演奏タイミングの微少な時間差がグルーヴ(音楽に合わせて体を動かしたくなる感覚)を喚起する,と経験に基づく説を唱えた。しかしながらDavies, Madison, Silva, and Gouyon (2013) の実験検証はKeilの説を支持しなかった。Davies et al. の実験では音刺激のグルーヴを一刺激ずつ絶対評価したが,この方法では評定基準が安定せず,評定者の心理が適切に反映されなかった可能性がある。本研究では,二つの音刺激を聞き比べて評定させる方法を採用し,時間差の効果を改めて検討した。その結果,Keilを支持し,楽器間に微少な時間差が有るときにグルーヴが喚起されることが示された。またその時間差の量は,およそ人が知覚できる最小の時間差であり,グルーヴは潜在・顕在の境界付近の時差で発生することが示された。