難波秀行, 佐藤和, 園部豊, 西田順一, 木内敦詞, 小林雄志, 田原亮二, 中田征克, 中山正剛, 西垣景太, 西脇雅人, 平工志穂
大学体育スポーツ学研究 18 21-34 2021年3月 査読有り
【背景】新型コロナウイルス感染症の蔓延予防のため緊急事態宣言が発令され,2020年前期は多くの大学で遠隔授業が行われた.実技を前提とした体育授業も遠隔で行われたが,その実態が明らかではなく十分な教育効果が得られたかは定かではない.そこで本研究では遠隔授業を余儀なくされた状況下において,体育実技授業の実態や課題,教員の働き方について調査を行い,ポストコロナに向けた大学体育を模索することを目的とした.【方法】107名の大学体育教員を対象に,Googleフォームを用いたWEBアンケート調査を行った.【結果】91.6%の教員がオンラインを含むかたちで全授業を開講したことが分かった.遠隔授業が78.5%,遠隔と対面の混在が19.6%であった.遠隔授業の内訳はオンデマンド型が41.5%,同時双方向型が25.0%,資料配布・閲覧型が22.6%であった.82.3%の教員が例年に比べ労働時間が増えたと回答しており,3倍以上が31.8%,2倍以上が26.2%であった.教育効果の主観的達成度では,「協同プレーの価値理解とコミュニケーション能力の向上」,「学校への適応」の2項目は他の項目に比べ有意に低かった(p<.05). 重回帰分析の結果,やりがいは,主観的達成度,ワークエンゲージメント,SOCスケール,職業性ストレスにより説明ができた(寄与率42.1%,F=18.56,p<.001).【考察】遠隔授業により「対人コミュニケーションスキル」や「学校への適応」については達成しにくいが,「規則的な生活習慣」,「体力・身体活動の増強」,「自主性や自発性」の教育効果を感じていた教員が半数程いることが示された.やりがいを持っていたものほど,遠隔による体育実技授業の教育効果をポジティブに捉えていた.大学体育の教育目的を再考し,遠隔授業で経験したノウハウをアクティブラーニングに応用するなどポストコロナの新しい大学体育授業を作ることが重要である.