西名 諒平, 岩田 真幸, 増田 真也, 清水 称喜, 中田 諭, 村山 有利子, 西川 菜央, 辻尾 有利子, 青山 道子, 穴井 聖二, 池辺 諒, 井上 智子, 入江 千恵, 川上 大輔, 川西 貴志, 佐藤 貴之, 佐野 亙, 高橋 克己, 竹森 和美, 竹森 加菜子, 田崎 信, 立石 由紀子, 田中 秀明, 田野 宏美, 豊島 美樹, 根本 尚慶, 藤原 愛里, 穂積 菜穂, 松田 弘子, 美濃部 晴美, 森 智史, Doorenbos Ardith, 戈木クレイグヒル 滋子
小児保健研究, 79(2) 140-151, Mar, 2020
小児集中治療室(PICU)に子どもが入室した親に生じる心理的状況を明らかにするために,不安,抑うつ,PTSDの既存尺度を用いた質問紙調査を行った。調査は,子どもが入室中と退室から3ヵ月後の2時点で実施し,日本国内12施設のPICUと6施設の小児が入室する成人ICUで,1回目(入室中)の質問紙に237人,2回目(退室後3ヵ月)の質問紙に142人の親(父親または母親)から回答を得た。その結果,子どもがPICUおよび成人ICUに入室した親のうち,入室中の時点で25.4~34.3%に,退室後3ヵ月の時点で11.6~20.4%に,不安,抑うつ,PTSDが生じており,子どもがPICUに入室した親は,子どもが成人ICUに入室した親よりも心理的問題が生じる度合が高かった。また,本邦においても,欧米の先行研究結果と同様に,PICU入室児の親に心理的問題が生じていた。ところで,入室中の不安,抑うつ,PTSD得点がカットオフ値以上であった親の方が,カットオフ値未満の親よりも,退室後3ヵ月の同尺度得点がカットオフ値以上であるリスクが高い一方で,退室後3ヵ月に不安,抑うつ,PTSD得点がカットオフ値以上の親には,入室中の同尺度得点がカットオフ値未満であった親が,不安で33.3%,抑うつで50.0%,PTSDで17.9%含まれていたことから,入室中に,一見問題がなさそうに見える親であっても,退室後に心理的問題が生じる可能性が示唆された。(著者抄録)