藤本 佳子, 大村 佳代子, 安田 温子, 大野 かおり
兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 30 1-13 2023年3月
【目的】新型コロナウィルス感染症の自宅療養者支援の実際と課題,それに関わる訪問看護師と保健師の連携や改善策について明らかにすることを目的とした。【方法】A県の訪問看護師と保健師に半構造的質問票調査を実施した。分析は,記述統計量算出後,χ2検定またはFisherの正確確率検定を行い,自由記述は,質的記述的分析を行い,内容の類似性に基づき分類した。【結果】訪問看護師138名,保健師20名から回答を得た。そのうち,訪問看護師44名,保健師20名が自宅療養者を支援していた。自宅療養者を支援した訪問看護師は,所属する訪問看護ステーションの看護師在籍数が多く(p=.001),併設施設がある(p=.046)など所属施設の規模が大きかった。自宅療養者支援の実際は,訪問看護師は,「訪問による健康観察」88.6%,「看護ケアの提供」84.1%,「生活支援」47.7%の順であった。保健師は,「電話による健康観察」95.0%,「訪問による健康観察」80.0%,「生活支援」35.0%の順であった。自宅療養者の支援上の課題は,【人員の確保や支援体制】【連携や情報整理の難しさ】【感染対策】【症状管理・把握の難しさ】【サービス制限による生活の困難さ】の5つが示された。自宅療養者の支援をした訪問看護師は,保健師との連携の困難感があり(p=.000),平時からの連携がないことによる「情報共有の困難さ」「業務の見えにくさ」が,困難感を強めることが示された。連携をとる上での改善点は,【情報通信技術(ICT)化・情報共有と発信】【情報交換・ネットワークの構築】【地域で自宅療養者を支援するしくみ】の3つが示された。【結論】訪問看護ステーションの特性に応じた支援協力依頼や,感染対応等の自宅療養者の支援が可能な訪問看護師の確保が必要と考える。また,感染者数の減少時や平時に支援事例の振り返りなど連携や交流の機会が必要と示された。一方,感染拡大期には,ICTを活用した支援者間の情報共有や依頼の明確化が必要と示された。(著者抄録)