植田 拓也, 浦出 俊和, 大平 和弘, 上甫木 昭春
農村計画学会誌 31 315-320 2012年11月 査読有り
わが国を代表する伝統的林業の一つである吉野林業は,極端な密植と弱度の間伐を数多く繰り返して長伐期とする施業によって,年輪幅が密で均一で,強度に優れた高級材の産地として発展してきた。これは優れた育林技術の結果であり,それを支えてきたのが吉野林業の特徴である山守制度である。本研究では,吉野林業において,山守が森林の管理状態に及ぼす影響を明らかにするとともに,山守の存続のあり方について考察することを目的とする。49林分の調査結果より,吉野林業においては,山守は森林の管理状態に影響を及ぼしているが,一部の管理業務しか実施されていない林分も多く,十分な機能を発揮しているとは言えず,その維持も困難な状況にある。山守の存続に資する新たなシステムとは,見回りの有償化,新たな取引システムへの見直し,山守と中小規模所有者をつなぐネットワークの形成,広範囲に後継者を募り,村域単位で育成するシステムの構築などである。