日刊工業新聞, Jan 26, 1995 Newspaper, magazine
【仙台】東北大学金属材料研究所の井上明久教授、増本健教授、竹内章助手らは二十五日、最大エネルギー積が現在使用されているアルニコ磁石の約三倍、希土類磁石(サマリウム・コバルト磁石)にほぼ匹敵し、しかも安価な鉄を主成分(九〇%)とする鉄・ネオジム・ボロン系の新タイプの高性能永久磁石材料を開発したと発表した。新磁石材料は、液体から急速に冷却して得たアモルファス合金を加熱して一部分を結晶化することで、ナノスケールの鉄、鉄・ネオジム・ボロン化合物(磁石強磁性相)、アモルファス相の三相が微細に、しかも均一に分散した組織。組成は鉄が九〇%(原子)、ネオジムが約七%(同)、ボロンが二-四%(同)で、高鉄濃度ナノ結晶となっているのが大きな特徴という。アモルファス状態で押し出しなどの塑性加工によってバルク材への成形が容易。また、ナノ組織のため微粉化しても特性劣化が少なく、等方性コンポジット磁石としても使用可能。さらに、従来の磁石材料と比較して鉄量が多いため、磁束密度が一・三テスラと高く、保持力(二百五十~二百八十キロA/メートル)は低いものの、この二つを積の最大エネルギー積が約百五十キロジュール/立方メートルを示す。新磁石材料は低材料コストで種々の形状への塑性加工ができるため、リードスイッチや磁気センサー、時計のステッピングモーター、電話機のリレーなどへ幅広く応用が可能という。井上教授らはこの成果を四月十八日、米国テキサス州のサンアントニオで開催される「一九九五インターマグ会議」で発表する。