多田 和也
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 114(393) 11-14 2015年1月21日
再生可能なエネルギー源への期待から,有機物など新規な材料を用いた光起電力素子に注目が集まっている。素子の性能についてより深く知ることを目的として,光照射下での電流-電圧特性を,理想光電流源,ダイオード,直列抵抗,並列抵抗をそれぞれ1つずつ含む簡単な1ダイオード等価回路にフィッティグすることで,これらの素子パラメータを抽出することがしばしば行われる。この際,主に第4象限のデータが使用される。このようなフィッティングについての効率的な計算アルゴリズム方法に関する研究論文は多数発表されているが,カーブフィッティグという観点からのモデル自体の特徴については議論されることは少ないようである。ここでは,十分に直列抵抗が高く並列抵抗が低い場合には,この簡単な1ダイオードモデルが非常に高いフィッティング能力を示すため,とりわけダイオードの理想因子の抽出は困難であることを示す。この条件は,バルクヘテロジャンクション型有機薄勝光起電力素子で満たされる場合が多い。一方,暗状態の特性からのダイオードの理想因子の見積もりは,並列抵抗が高いために比較的容易である。