研究者業績

木本 幸憲

キモト ユキノリ  (Yukinori Kimoto)

基本情報

所属
兵庫県立大学 環境人間学部 准教授
東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 共同研究員
学位
博士(人間・環境学)(2017年7月 京都大学)

J-GLOBAL ID
201901006447136787
researchmap会員ID
B000366433

論文

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書籍等出版物

 2
  • 横森, 大輔, 梶丸, 岳, 木本, 幸憲, 遠藤, 智子, 井出, 祥子 (担当:共訳) (原著:Array)
    大修館書店 2015年12月 (ISBN: 9784469213539)
    本書は、学部・大学院生に向けて書かれたコミュニケーション研究の入門書である原著を、日本の読者向けに注釈を施した訳書である。順番交替、隣接対などの会話の構造を理解するのに必要不可欠な概念を解説しながら、それが言語構造、ジェスチャー、認知システム、物理的環境、そして当該文化とどのように関わるかを論じた本である。特に、哲学の発話行為論を会話分析・心理学などから捉え直した章は、学生にとって発話というものを複眼的に捉えられる極めて有益な解説が展開されている。
  • 木本幸憲
    Dallas: SIL International

講演・口頭発表等

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  • 木本幸憲
    日本英文学会九州支部第76回大会 2023年10月14日  招待有り
    所有概念を言語化する際、伝統的に英語は have 型の言語であり、日本語は be 型の言語であると述べ られてきた(池上 1981, 1982、Hinds 1986、上山 2009 ほか)。本発表では、言語類型論的観点から、 そのような日英比較による 2 項対立な観点を相対化し、また所有構文の多様性を存在・所有のイメージ の拡張の度合いの差によって整理する。世界の言語と比較した場合、日本語は、「私は赤い車を持ってい る」「彼女は細い腕をしている」など「持つ、する」という他動詞が存在する点など、日本語は純然たる be 言語とは言えない。これは、exist 動詞のみでしか所有を表せない北部フィリピンの言語などとは対照的である。また英語においても、have は存在表現までは十分に拡張しておらず、フランス語、ドイツ語スイス方言、中国語と比べると、have 型の傾向は低いと言える。このような構文の多様性は、言語が 話者に課す捉え方の違いであり、存在ないし所有のイメージがどの程度言語によって比喩的に拡張でき るかの違いである(Langacker 1976, 1990, 1999, 2009)。本発表では、存在・所有のイメージないし捉え方が拡張される意味領域の差によって、英語と日本語の所有構文が相対的に位置付けられることを述 べる。
  • 木本幸憲
    日本認知言語学会第24回大会 2023年9月2日
    英語の書き言葉では思考内容や発話内容、知識などを表現する際に、that 節などの補文節を用いるのが一 般的である。しかし言語類型論的に見渡した場合、それは普遍的な事象ではない (Dixon & Aikhenvald 2006) 。特に話し言葉においては、補文を使わずとも、多様な構文を用いてそのような意味内容を伝える ことができる。本研究では話し言葉のコーパス類型論の調査を踏まえて、並置構造や、副詞、助動詞など がその代替構文として頻繁に用いられていることを指摘する。また、それが心の理論の研究にどのよう なインパクトを与えるかについても議論する。
  • Kimoto, Yukinori
    Endangered Languages and Language Documentation (LING 703600) 2023年3月29日 Liao, Hsiu-chuan  招待有り
  • Kimoto, Yukinori, Shiohara, Asako
    14th Conference of the Association for Linguistic Typology 2022年12月16日
  • Yukinori Kimoto
    Webinar of Grammar of Philippine languages 2022年10月8日  招待有り
  • 木本幸憲
    2022年 ひと・ことばフォーラム 第1回「危機言語を捉え直す」 2022年6月11日  招待有り
  • 木本幸憲
    科学研究費補助金新学術領域研究「共創的コミュニケーションのための言語進化学」第10回領域全体会議 2022年2月23日
    本発表では、2019年から参与している、科学研究費補助金新学術領域研究「共創的コミュニケーションのための言語進化学」での取り組みを発表した。人間言語の特徴の一つは、ある表現(特に命題内容)を別の表現の内部に埋め込む構造である。本研究では、アジア・太平洋地域を中心とする14の言語を対象にし、埋め込み構造の言語差を明らかにした研究を取り上げたほか、世界の少数言語の現況についても報告を行った。
  • Kimoto, Yukinori
    International Seminar Literates 2022: Current Issues and Opportunities in Linguistics, Literature, Culture and Arts Studies in the New Normal 2022年1月22日 Faculty of Foreign Languages, Universitas Mahasaraswati Denpasar  招待有り
    マイケルクラウス氏が危機言語の問題を取り上げてから約30年が経った。本発表では、その間危機言語がどのように議論され、世界の言語の実態がどの程度明らかになったのかを振り返った。そこから危機言語に至る社会的背景には大きく二つのパターンがあることを指摘した。そこでは、国民国家の発展に伴う少数言語の抑圧は、これまで議論になってきたが、それとは直接関わらない領域で少数言語が失われつつあることを指摘した。
  • Kimoto, Yukinori
    15-ICAL: 15th International Conference on Austronesian Linguistics 2021年6月29日 The Department of Asian Studies at Palacký University Olomouc (Czech Republic)
    フィリピンの大多数の言語においては、動詞はそのままでは動詞になれず、必ずなんらかの接頭辞・接尾辞などを伴わなければならない。従来記述・理論化が進んでいるのは、行為を表す語根が接辞を伴って動詞になるパターンである。今回は、物理的なモノを表す語根が接辞を伴って動詞化されるケースを観察し、それをパターン化した。それぞれのパターンにおける意味的、形態論的、統語論的特徴を明らかにした。
  • Shiohara, Asako, Kimoto, Yukinori, Yanti, Nomoto, Hiroki
    15-ICAL: 15th International Conference on Austronesian Linguistics 2021年6月28日 The Department of Asian Studies at Palacký University Olomouc (Czech Republic)
    同じ物語を別の言語で語らせたらどのような違いが生じるのか。そこには各言語文化での語りのスタイルというものが影響を及ぼす。本研究では、同じ語族に属するマレー語、インドネシア語、アルタ語、イロカノ語を例にして、その差を比較した。その結果、アルタ語とインドネシア語では直接話法が目立ち、特にアルタ語では登場人物の声を再現しながらプロットを進めていく傾向が強い点が明らかになった。
  • Kimoto, Yukinori
    CHAGS XII: Twelfth Conference on Hunting and Gathering Societies 2018年7月
    アルタ語は話者数が10人で、消滅の危機に瀕する言語である。しかし従来どのようなプロセスでこのような少数言語になるに至ったかは明らかではなかった。本発表では、山岳地帯からの大量の農耕民の流入により、アルタ人の狩猟の場が失われ、別の民族(特にカシグラン・アグタ人)のコミュニティに移り住んだことが原因にあることを述べた。またその背景にはアルタ人とカシグラン・アグタ人が、同じ狩猟採集民としてのアイデンティティを共有していることが、さらなる同化を促した点を指摘した。
  • 木本幸憲
    日本言語学会第156回大会 2018年6月23日 日本言語学会
    言語研究においては、共時的ないし通時的観点からの文法研究が中心であるが、本発表では、それに相互行為的な側面を取り込むことで、これまで記述の難しかった形式の特徴付けが可能になることを議論した。ここではアルタ語の位置保持詞(placeholder)を取り上げ、その機能はジェスチャーと密接に関わっていることを述べた。特に当該発話において、ジェスチャーが言語以上に意味伝達の中心となる場合、それを指標する際に位置保持詞が用いられることを明らかにした。
  • Kimoto, Yukinori
    International conference on Southeast Asian Linguistics Society 2018年5月 Southeast Asian Linguistics Society
    世界の言語は、自動詞の主語が、他動詞主語と文法的振る舞いにおいて一致する対格言語か、他動詞目的語と一致する能格言語に分けることが出来るが、フィリピンの言語はそのいずれにも当てはまりにくいとされてきた。本研究ではフィリピンのアルタ語のモノローグデータを用い、量的に分析した結果、自動詞の主語が他動詞の目的語と一致するパターンが82%を占めた。これは少なくともアルタ語においては、その文法的振る舞いは能格言語の振る舞いに合致することが示された。
  • 木本幸憲
    1st Seminar on the Development of Intersubjective Recognition 2018年3月14日 「承認をめぐる間主観性の発達に関する研究」プログラム事務局  招待有り
    本ワークショップは、S. LevinsonとP. Brown両氏をディスカッサントに迎えての間主観性にまつわるセッションを行った。木本発表では、アルタ語に現れるwaという形式が、主にある表現を思い出せない場合の代替表現として表れ、それが時としてジェスチャーを用いて解決される例を見た。アルタ語では、このwaを多様な形態論的派生・屈折、統語的構文の中に埋め込むことで、相手の理解を促進し、会話を間主観的に前進させる役割を果たしていると結論づけた。
  • 木本幸憲
    日本言語学会第155回大会 2017年11月25日 日本言語学会
    本発表では、アルタ語の述語が、動作動詞、可能動詞、状態動詞、形容詞の4つの分けられることを、形態論的、統語論的証拠から論じた。それぞれのクラスは、テンス(現在・過去)の区別の有無、ヴォイスの区別の有無、進行形の有無、強調形の有無などから証拠付けられ、一見類似しているように見える動作動詞の進行形と状態動詞が、主語の有生性と動作性において使い分けられている点、形容詞と状態動詞が、時間的持続性(time stability)の観点から使い分けられていることを論じた。
  • 木本幸憲
    コミュニケーションの自然誌研究会 2017年11月20日
    本発表では、言語と文化、コミュニケーションとの関係について、アルタ語の談話でよく出現するwaという形式に着目して議論した。第一部ではアルタ人の民族学的背景を生活様式、住居、経済活動に注目して記述した。そして第二部では、アルタ語のwaという形式がコミュニケーションのどのような場面に現れるかを記述した。特に発話のトラブルに見舞われた際、そしてジェスチャーで主要な意味を伝達する際に現れることを明らかにした。
  • 木本幸憲
    第2回大阪言語学研究会 2017年10月7日
    本発表では、自身のフィールドワークを元に収集した形態論的分析を元に、アルタ語の述語が、動作動詞、可能動詞、状態動詞、形容詞の4つの分けられることを示した。それぞれは、テンス(現在・過去)の区別の有無、ヴォイスの区別の有無、進行形の有無、強調形の有無などから証拠付けられることを論じた。またそれぞれのクラスの述語がどのような意味クラスを表すのに用いられているのかを例証した。
  • 木本幸憲
    京都言語学コロキアム 2017年6月24日
    本発表では、フィリピンのアルタ語で見られる複雑な動詞接辞について、その共時的・通時的分析を行った。まず共時的分析として、それがヴォイス接辞として捉えるよりむしろ、事象類別の機能を果たしていると見なすほうが妥当であることを述べ、さらに歴史的にはアルタ語は、その祖語であるオーストロネシア祖語に比べて、命令法・接続法などの動詞の形は失った代わりに、複雑な事象類別の機能を示す動詞の形が発達したことを明らかにした。
  • Kimoto, Yukinori
    Linguistics and Applied Linguistics Seminar, University of Melbourne 2017年5月19日 School of Languages and Linguistics, Faculty of Arts, University of Melbourne
    本発表では、ほぼすべてのフィリピンの言語で見られる複雑な動詞接辞について取り上げ、それがヴォイス接辞として捉えるよりむしろ、事象類別の機能を果たしていると見なすほうが妥当であることを主張した。その例としてアルタ語を取り上げ、ヴォイス接辞としての分析で行われてきた意味役割ベースの議論(行為者/受影者が主語になる)では接辞の区別がうまくいかないことを示し、感情を示す事象、姿勢を示す事象、など事象の種類によって動詞接辞が使い分けられていることを示した。
  • 木本幸憲
    言語と人間研究会 第42回 春期セミナーワークショップ 2017年3月27日 「言語と人間」研究会  招待有り
    本発表は、言語と人間研究会において行われたフィールド言語学についての5時間のレクチャーである。本レクチャーでは、始めにフィールド言語学の特徴が、その網羅性、包括性にあることを示した後、実際にカシグラン・アグタのビデオデータを元に、受講生にこれまで自分が聞いたことのない言語の音声を聞いて書き取り、語彙・文法体系(の一部)を解明していくプロセスを体験してもらった。またフィリピンの言語に見られる複雑な人称代名詞の一覧を示し、どのように分析すれば、体系的なパラダイムとして整理できるかについても実習を行った。
  • 木本幸憲
    第38回社会言語科学会研究大会 2016年9月4日 社会言語科学会
    本発表は、社会言語科学会第38回研究大会で行われたワークショップである。この発表では、言語研究をする際の理論のあり方について、理論的一般化と記述との間に通現象的一般化という考えがあることを紹介し、通現象的一般化は理論的な中立性は保ちつつも、どの理論に依拠していても考慮すべき現象が網羅され、検証可能な具体的認定基準を明示化しているなどの特徴があることを示した。そしてこの通現象的一般化こそが理論と記述をつなぐ橋渡しになることを指摘した。
  • 木本幸憲
    フィールド言語学ワークショップ(特別篇) 2016年3月24日 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所  招待有り
    本発表は、東京外国語大学で行われたフィールド言語学者のためのワークショップでの講演である。本発表では、近年の話し言葉研究で必須のツールとなりつつあるソフトウェアELANの意義・利点とフィールド言語学における使用法を解説した。ELANは、音声・映像に書き起こしを行うソフトウェアであるが、他のソフトウェアに比べて、言語学に特化している分、強力なツールが多数利用可能であること、そして他のソフトウェアとのインターフェースも充実している点などを述べた。
  • Kimoto, Yukinori
    Pre-conference workshop featuring the Japanese translation of Prof. Enfield’s Relationship Thinking. 18th Annual meeting of Pragmatic Society of Japan 2015年11月24日
    このワークショップは、Nick Enfieldの翻訳『やりとりの言語学』が出版されたことを記念して開かれたものである。本発表は、言語と文化の関係に焦点を当て、アルタ語においてartaという語がどのような文化的価値を持つのかを議論した。特にその語が自民族のみならず、別の民族であるAgtaをも指す包括的概念であること、そしてそれは狩猟採集民であるアルタ人特有の文化・歴史的経緯が深く関与していることを明らかにした。
  • 木本幸憲
    第2回京都語用論コロキアム—動的語用論の構築へ向けて 2015年9月26日
    この発表では、近年の語用論研究で注目されているNick Enfield (2014)の書評を行った。この本の主題は、言語・文化が変化するメカニズムである。彼は本書の中で変化・伝播するのは、システム全体か、個々のアイテムか、という問いを立て、実際に変化・伝播するのは個々のアイテムであることを述べている。本書評では、個々のアイテムが変化・伝播の対象であることは了解しつつも、複雑系・自己組織化の観点から見ると、システム全体が変化・伝播している可能性もある、という別の見方を提供した。
  • Kimoto, Yukinori
    13th international conference on Austronesian linguistics 2015年7月
    本発表では、従来オーストロネシア諸語においてあまり記述的装置として用いられていなかったモーラが、フィリピンのルソン島で話されているアルタ語の共時的・通時的事実を説明するのに極めて有効なことを論じた。アルタ語は、共時的にもその音節が短母音で終わるか、長母音または短母音+尾子音で終わるかによって異形態が説明できるほか、母音の長短の発達それ自体にもモーラの原則が働いていることを論じた。
  • 木本幸憲
    京都言語学コロキアム 2015年3月27日 京都大学大学院 人間・環境学研究科
    J. DuBois, W. Chafeなどを初めとした談話機能主義の言語学においては、情報の流れと項構造には密接な関係があるとされていた。本稿では、そこで措定されてきた考えは、アルタ語には当てはまらない部分がある点で、従来の理論は決して普遍的ではないことを明らかにした。一方、アルタ語の談話においては、左方転位構文が、情報の流れというグローバルな制約と、項構造における文法的制約の双方を満たすために頻繁に用いられていることを示した。
  • Kimoto, Yukinori
    Constructing a research network for documenting minority languages in and around Indonesia, the 3rd meeting 2015年3月17日 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
    従来フィリピン、オーストロネシアの言語学では、語のストレス(ないしアクセント)の問題は取り上げられてきたが、母音の長さは十分に議論がなされてこなかった。本発表では、アルタ語の母音の長さを考える点で、日本語音韻論で長く論じられてきたモーラの概念が、アルタ語の母音の通時的発達を説明する上で極めて重要なことを示した。特に音節末子音の消失により短母音が長母音になる例は、モーラ数を維持するための代償的長音化であると説明できることを述べた。
  • 木本幸憲
    日本言語学会第149回大会 2014年11月15日 日本言語学会
    本発表では、アルタ語の個々の動詞接辞の機能と、テンス・アスペクトの屈折可能性を明らかにした。自動詞と他動詞は形態論的に区別されるが、自動詞・他動詞共に複数の接辞が存在する。複数の他動詞接辞は、対象にどのような働きかけが見られるかの違い(受影性の度合い、移動を表すかなど)によって使い分けられ、自動詞は、行為者の複数性、相互性、事象の持続時間、意志性などが関与していることを明らかにした。
  • Kimoto, Yukinori
    The 3rd MINPAKU Linguistics Circle of the Academic Year 2014 2014年9月7日 国立民族学博物館
    本発表では、研究未開発言語であるアルタ語について、Blust and Trussel (In progress) などのマラヨ・ポリネシア祖語の再建形などを援用してアルタ語音韻の通時的変化について論じた。アルタ語においては祖語の*j, *d, *gが/g/で反映されていること、*rが/r/で反映されていることの他、祖語にはない新たな母音が、母音の融合によって生じている(*i+*a > /e/, *a+*u > /o/)ことを明らかにした。また祖語の段階の母音の長短は、1度消滅したにも関わらず、周辺の音の消失・融合などによって新たに長母音が新たに発達したことを示した。
  • 木本幸憲
    社会言語科学会 第33回研究大会 2014年3月16日 社会言語科学会
    本発表では、フィリピンで話されているアルタ語(オーストロネシア語族)の民族誌的記述と話者数・流暢性の度合いの調査をはじめとする社会言語学的、民族誌的記述を通じて、アルタ語がどのレベルの言語危機の状態にあるかを査定した。直接的な言語危機の要因は、カシグラン・アグタ人との同化にあるが、その背景には、アルタ人を取り巻く経済的、言語的、文化的側面が複合的に関与していることを明らかにした。
  • Kimoto, Yukinori
    268th Lecture, National Taiwan University 2014年2月 National Taiwan University
    本講演では、アルタ語の文法現象のうち、指示詞の文法化と、接続詞の共時的多機能性を取り上げて論じた。アルタ語の社会言語学的背景について議論をした後、指示詞はそれと同一の形式が格標識の斜格と時を表す副詞節接続詞として用いられる用に発達を遂げたことを明らかにした。また接続詞aは、形容詞修飾、副詞修飾、補文導入の機能を果たすこと、また形容詞修飾における先行要素と後続要素は交替可能であり、それには一定の自由度と制約があることを述べた。
  • Kimoto, Yukinori
    関西言語学会第38回大会 2013年6月9日 関西言語学会
    フィリピンで話されているアルタ語は、Reid (1989)の論文で紹介されているのみの研究未開発言語である。本発表では、著者が行った1年間のフィールドワークを元に、アルタ語の音韻・文法についての基礎的な情報を提供した。特にアルタ語の名詞句は冠詞によって格・数・定性が示されること、名詞の後に付く接語が話者にとって既知かどうかを示す特定性を区別する機能を有していること、そして動詞は、典型的なフィリピンの言語が有するヴォイス接辞が義務的に付加されることを述べた。

担当経験のある科目(授業)

 15

Works(作品等)

 1

共同研究・競争的資金等の研究課題

 9

社会貢献活動

 2