金丸裕志
和洋女子大学紀要 52 71-81-81 2012年3月 査読有り
多民族国家の多い発展途上国では、とくに自由選挙や複数政党制の導入に伴って、民族間対立や民族紛争が発生しやすい。民族間での対立は、他の政治的対立と比べて暴力的で長期的になりやすく、民主主義の定着を阻害する。こうした民族集団はこれまで、長い歴史を持つものであると考えられてきた。しかし、多くの民族紛争では、民族集団が指導者によって形成され動員されている。それというのも、民族アイデンティティは重層的で可変的であり得るからである。そしてこうした民族集団の政治動員は、民族政党として民主化後に登場し、そこから民族紛争に発展するケースもある。このように、紛争になるリスクを考えると、民族集団を政治競争に持ち込む民族政党は避け、政策や業績をめぐる政党間競争が望ましい。